【事故事例】過去にあったオゾン発生器・空気清浄機・加湿器の事故
製品購入を考える際に、その製品がちゃんと安全かどうか調べることがあるのではないでしょうか?
今回は「NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)」が提供している事故情報データベースより、オゾン発生器・空気清浄機・加湿器について死亡事故を含める、過去の事故事例を調査しました。
「電源が入らない」「スイッチ不良」「取っ手が壊れて本体を足の上に落としてしまいケガをした」など、どのような製品であれ、一定数の故障や不良はつきものですが、「命にかかわる重大な事故」という程ではなく、おそらく多くの方が「許容範囲」だと考えるでしょう。
しかし、「深刻な健康被害」「命にかかわる重大な事故(死亡事故)」などについては、消費者として絶対に許容できるものでありません。
今回は、コロナ禍で認知度をグッと上げ、その需要が100倍以上になったとも言われている「オゾン発生器」、そして昔から馴染み深い「空気清浄機」「加湿器」これら3つの機器について死亡事故を含める過去の事故事例を調査しました。
調査方法
通常、電化製品などの事故について調べる際、2つの方法によって調べるのが一般的です。
1つは、「消費生活用製品安全法第35条第1項に基づき事業者から報告のあった事故のうち、プレス発表が行われたもの」であり、その情報を経済産業省が公表しています。
しかし、上記の経済産業省の製品事故検索だけでは、報告義務のない事故について、一般消費者は知ることができません。
そんなときに役立つのが、もう1つのデータベース。
「NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)」が提供している事故情報データベースです。
NITEでは、報告義務のない事故についても、消費者からの情報をもとに独自調査をし、それが事実であり事故と認定された場合、このデータベースに掲載されます。
プレス発表が行われた事故事例
まずは、プレス発表が行われた事故事例から機器別に見ていきましょう。
オゾン発生器(プレス発表が行われた事故事例)
検索キーワードに「オゾン発生器」と入力すると、1件だけ該当がありました。
詳細をクリックすると、下記の情報が表示されました。
「人的被害概要」の項目が空白になっていたことから、人的被害はなかったものと思われます。(あれば必ずここに記載されます)
事故原因は「オゾン発生器内部のフィルムコンデンサーの異常発熱」ですが、これ自体は重大な事故ではありません。
また、この事故事例は「ウォーターサーバー」ですが、「オゾン発生器」という機器の事故事例は0件でした。
「オゾン発生器」という機器の事故事例は0件だったことと、このウォーターサーバーの事故が「オゾン発生器内部の〜」ということでしたので、念のため取り上げました。
実質的には、オゾン発生器に関する「プレス発表が行われた事故事例」は0件であると考えて問題ないでしょう。
よって、軽微な事故だけではなく、死亡事故などの重大事故も「プレス発表が行われた事故事例」については0件です。
空気清浄機(プレス発表が行われた事故事例)
続いて、「空気清浄機」を検索します。
該当は14件でした。
14件中13件が「焼損」「出火」となっています。
どうやら、「集塵フィルタと脱臭フィルタの間で放電が発生し、発煙・出火」というケースが多いようです。
メーカーとしては、ダイキン、シャープ、パナソニックなど。
焼損や出火する事故にはなったものの、死亡事故は1件もありませんでした。
加湿器(プレス発表が行われた事故事例)
加湿器も同様に調べます。
空気清浄機よりも多い16件の該当がありました。
16件中15件は、「発煙」「発火」「焼損」「火傷などの負傷(軽度)」「お湯が噴出してきて胸部、腹部、大腿部にお湯がかかり火傷を負った(重傷)」という事故でした。
そして、1件の死亡事故事例を確認しました。
報告義務がない事故事例
次に、報告義務が生じず、プレス発表も行われなかった言わば「隠れた事故」をNITEの事故情報データベースで調べました。
オゾン発生器(報告義務がない事故事例)
該当は13件でした。
13件中12件が「オゾン発生器」、1件が先程述べたウォーターサーバーでした。
オゾン発生器の事故事例12件中11件が同じ会社の同じ製品であり、その事故内容は「使用中のオゾン発生器が過熱し、樹脂が変形した」というものでした。
12件中1件のみ「浴槽にオゾン発生器を入れて入浴していたところ、咳が出るなどの症状が出た」という内容を確認しました。
その事故について調べてみると「製造輸入販売業者:金澤工業株式会社」「型式:OZM-250K」であることが分かったため、当該製品を調査したところ、エアレーション式で浴槽内のお湯をオゾン水にしようと試みたものと思われますが、エアレーション式のオゾン水生成は効率的に水にオゾンが溶け込んでいかず、その大部分が水中から室内空間に逃げてしまうため、当然の結果と言えます。
被害の種類は「軽傷」とのことです。
オゾン発生器でオゾン水を生成する際は換気をよく行うか、もしくは必要水量に応じて電解式のオゾン水生成器をご用意いただければ、このような事故は未然に防ぐことができます。
お風呂場で浴槽のお湯をエアレーション式によってオゾン水生成するのは、軽傷とはいえ、このような事故にもつながることがありますので、おすすめしません。
空気清浄機(報告義務がない事故事例)
該当は196件でした。
今や空気清浄機の普及率は3世帯に1世帯とも言われていることを考慮すれば、この196件という数字は決して多くはないでしょう。
詳細を確認したところ、事故内容の9割以上は「発煙」「焼損」「火災」「火傷」などがほとんどでした。
なかでも、火災規模として大きなものは「建物1棟を全焼、3棟を類焼する火災が発生した。(事故発生地:鳥取県)」「木造2階建住宅の2階寝室の空気清浄機付近から出火し、2階部分を全焼した。」というものでした。
電化製品を利用する以上、空気清浄機に限らず火災のリスクは常にあることを考えれば、普及率がきわめて高い空気清浄機という電化製品で起きてしまった「たまたまの事故」と考えることもできます。
196件中、気になったものが3件あったので、紹介します。
・空気清浄機を使用していたところ、家族4人が体調不良になり、医療機関を受診したところ、気管支炎と診断された。
・窓を閉めエアコンをつけた約8畳ほどの部屋で、ラミネーターを使用中と使用後に目や喉が痛くなり、2メートルほど離れたところにいた文鳥が死亡した。なお、自動運転中の空気清浄機の表示が「強」の状態となり、その状態が数時間続いた。
・空気清浄機を寝室で使用していたが、いつも白い粉のようなものが床一面に落ちていた。そのうちにのどが痛くなったので、変に思い、空気清浄機のフィルターを取り出したところ、白い粉が床一面に落ちた。のどの痛みの原因と思いメーカーに申し出て、フィルターを交換したら、粉が出なくなった。同時期に購入したもう一台の清浄機も確認したところ、同様の白い粉が落ちていたので、フィルターを交換した。
他には、このような事故事例もありましたが、これは特に空気清浄機に限った話しではないので、さほど気にする必要はないと思います。
「空気清浄機のフィルターをビニール袋から取り出そうとした際、手に5針縫うけがを負った」
「空気清浄機の吹出口に子供が手の指を入れ、引く抜く際に格子の内側で指を切った」
「当該製品を持ち、階段を下りようとしたところ、水がこぼれ、足を滑らせ転倒し、1名が重傷を負った」
加湿器(報告義務がない事故事例)
該当は193件でした。
詳細をすべて確認したところ、「火災」「焼損」「発煙」「出火」「蒸気噴出口に手を置いたことが原因で乳児が火傷を負った」などの原因が9割以上を占めます。
内4件ほど気になったものを紹介します。
・A200700689 2007/10/06
当該製品を使用していたところ、レジオネラ肺炎を起こし死亡した。(事故発生地:新潟県)
※先に紹介した「プレス発表が行われた事故事例」と同じもの。
・2001-1884 2002/01/18
平成14年1月18日夜、和室にて使用中発煙を確認したが、当該加湿器によるものとは気付かず使用を継続。その後20日に至り子供部屋に当該加湿器を移動し、その際畳上に焼けこげを発見したが加湿器に起因するものとは思わず子供部屋にて加湿器を継続使用した。その後異常を発見した。加湿基底部に約3cmの穴、和室畳上に約3cmの焼け焦げ、子供部屋フローリング床に約2cmの焼け焦げ3~4か所ができた。
・1997-1328 1998/03/22
留守中に出火、自宅兼診療所が全焼した。
・1996-1160 1997/03/07
2階寝室のベッド棚上で使用中、発火し、寝室約36平方メートルを半焼した。家人は外出中で、通行人の通報により、消防が消火した。
事故事例のまとめ
そもそも普及率が大きく異なるため、単純に比較はできませんが、表にしてみてみましょう。
【プレス発表が行われた事故事例/経済産業省】
※重大な事故=「死亡事故」「家屋全焼」など
機器 | 事故件数 | 重大な事故※ |
---|---|---|
オゾン発生器 | 1 | 0 |
空気清浄機 | 14 | 0 |
加湿器 | 16 | 1 |
【報告義務がない事故事例/NITE(独立行政法人製品評価技術基盤機構)】
※重大な事故=「死亡事故」「家屋全焼」など
機器 | 事故件数 | 重大な事故※ |
---|---|---|
オゾン発生器 | 13 | 0 |
空気清浄機 | 196 | 3 |
加湿器 | 193 | 4 |
今回は「オゾン発生器と比較して、空気清浄機や加湿器は重大事故もあり、危険だ!」ということをお伝えしたいのではありません。
この事実からお伝えしたいことは「オゾン発生器という機器は特別危険な機器などではない」ということです。
コロナ禍において、オゾン発生器の認知度が一気に高まり、「オゾン発生器は危険だ」「いや、そんなことはない安全だ」という議論を見かけますが、事故事例という観点からその事実をもとに見てみると、オゾン発生器が他の電化製品と比較して危険であると結論づける材料はどこにもないのです。