豚コレラの蔓延から考えられる養豚農場の衛生改善について

26年ぶりに日本国内で発生が確認された豚コレラ。その高い伝染力と致死率から、厳戒態勢を敷いての対応が行われています。
ニュース等でも話題になったことから、どのような伝染病なのか、気になっている方も多いのではないでしょうか。
この記事ではこの度話題の豚コレラについてとこのような病気が蔓延する養豚場の衛生環境の改善方法も含めて、考えてみたいと思います。

オゾン漫画

農林水産省の発表によれば、平成30年9月9日、岐阜県の養豚農場で平成4年以来26年ぶりとなる豚コレラの発生が確認されたとのことです(農林水産省「豚コレラについて」、2019年2月19日時点)。

また、それ以降も大阪府、長野県、愛知県、滋賀県でも複数の養豚農場において豚コレラの発生が確認されており、非常に多くの飼養豚が豚コレラの影響に晒されているということがわかります。

豚コレラは家畜伝染病予防法における家畜伝染病に指定されており、治療方法が無く影響も甚大であるとされているため、養豚農家のみならず政府や自治体も厳戒態勢を敷いて発生・まん延防止のための対応を行っています。

それほど家畜業界に大きな影響を与えうる伝染病だということですね。

ウイルスのイメージ画像

豚コレラとは、豚コレラウイルス(classical swine fever)を原因とする豚といのししの伝染病です。
日本では、家畜伝染病予防法において家畜伝染病に指定されており、発生の予防とまん延の防止が求められています。

感染すると、発熱、食欲不振、うずくまり、白血球減少症、運動失調、後躯麻痺、紫斑など様々な症状を引き起こします。

致死率が高く、急性では数日~2週間、慢性では1ヵ月~数ヵ月で死に至ります(家畜疾病図鑑Web「豚コレラ」)。

より詳細な症状については、農研機構の公式サイトで豚コレラの臨床症状と病変についての資料が公開されています。

養豚場のショベルカー

平成30年9月9日に岐阜県で豚コレラ発生が確認される前までは、日本国内では豚コレラは清浄化していると判断されていました。

従って、豚コレラなどの伝染病の発生を予防するための対策として、外部から国内の養豚農場へウイルスが侵入することを防ぐことが重要だとされています。

実際に、水際では中国や東南アジアなど豚コレラ発生国からの肉の輸入を原則禁止とし、外国へ行く畜産従事者が現地の飼養農場へ立ち入ることを避けるように求めるなどの方針が採られています(農林水産省「豚コレラについて」)。

また、家畜伝染病予防法では家畜の所有者に対して伝染病を予防するために飼養衛生管理基準を遵守して衛生管理を行うことが義務付けられています。

豚やいのししの飼養に関しても、飼養衛生管理基準の遵守のためのパンフレットが作成されています(農林水産省「飼養衛生管理基準について」)。

農林水産省ホームページでは、農家に向けて豚コレラの侵入を防ぐための対策方針がアナウンスされています(農林水産省「豚コレラ・アフリカ豚コレラの侵入防止対策を徹底しましょう!」、「予防対策の重要ポイント」)。

「予防対策の重要ポイント」では、以下のように人や物、車両、飼料、野生動物など外部のものからウイルスが持ち込まれないように徹底して対策を行う方針が採られています。

(1)人・物・車両によるウイルスの持込み防止。
衛生管理区域、豚舎への出入りの際の洗浄・消毒の徹底
衛生管理区域専用の衣服、靴の設置と使用の徹底
人・物の出入りの記録
飼料に肉を含み、又は含む可能性があるときは、あらかじめ摂氏70度・30分間以上又は摂氏80度・3分間以上の加熱処理を徹底

(2)野生動物対策
飼料保管場所等へのねずみ等の野生動物の排せつ物の混入防止
豚舎周囲の清掃、整理・整頓
死亡家畜の処理までの間、野生動物に荒らされないよう適切に保管

-農林水産省「予防対策の重要ポイント」より引用
豚コレラウイルスが養豚環境内に侵入して飼養豚に感染した場合、感染動物との直接の接触や、感染動物の鼻汁・排せつ物との接触によって短期間で急速に感染拡大していきます(家畜の監視伝染病「豚コレラ」)。

農林水産省が公表する「豚コレラに関する特定家畜伝染病防疫指針」では、豚コレラの感染の疑いが出た場合、直ちに都道府県に届け出ることが求められており、発生前・発生後共に国や自治体が方針に基づいて防疫措置を実行することになっています。豚コレラの発生はその養豚農場だけの問題にとどまらないということですね。

消毒液のイメージ

養豚農場では、伝染病などの病原体の侵入を防がなければならない区域を衛生管理区域として、その区域への不要な出入りや持ち込みを最小限に抑えたうえで、農場内の環境・物品・人の洗浄と消毒を徹底して行います(農林水産省「飼養衛生管理基準について」)。

衛生管理区域に出入りする車両やヒトに対しては、消毒薬噴霧器や消毒槽、消石灰帯等を用いて消毒を行います。

ヒトの消毒の場合、特に手や指の消毒や、消毒槽による靴の消毒が行われます。

また、農機具庫や飼料庫等の施設内設備や施設内で使用されるあらゆる器具も洗浄・消毒の対象となります。

畜舎や畜舎内のケージも、家畜の搬出後に糞便等を清掃し、消毒を行うことが必要となります。

畜産農場で用いられる消毒薬には、両性石けん・逆性石けん・塩素剤・ヨード剤・オルソ剤・強アルカリ剤・グルタラール製剤などがあり、それぞれ対象に応じて適切に使用する必要があります(北海道根室家畜保健衛生所「畜産農場における消毒マニュアル」)。

このように、養豚農場の衛生管理を行うためには、多種・多量の消毒薬を使用しなければなりません。

しかし、多種の薬剤を大量に使用することは、薬剤の残留など安全・衛生上の問題があります。

上で説明した薬剤に加えて、強い酸化力を持つオゾンも養豚農場の衛生管理に利用できます。

もちろんオゾン発生器を利用すれば全ての豚コレラウィルスを除去できるというわけではありません。

1つの選択肢として、オゾンの酸化力による分解機能も考えられます。

O3

オゾンとは、O3という分子式で表され、フッ素に次いで強い酸化力を持つ物質です。

この物質を気体で空気中に放出したり、水に溶け込ませてオゾン水を生成することで、養豚農場における除菌を効果的に行うことができます。

オゾンは、その強い酸化力を利用することで除菌を行うことが可能です。

オゾンは、結合のエネルギーが弱いため、自らを構成する原子を分離して酸素分子(O2)と酸素原子(O)を生成します。

オゾンの分解

この時に生まれる酸素原子は強い反応力を持っているため、他の物質と結合しようとし、これがオゾンの強い酸化力の源となっています。

酸素原子と結合した物質は、有害物質であれば他の無害な物質へと変わります。

また、細菌や豚コレラなどのウイルスに対しては根本から死滅させるという効果を持っています。

オゾンは容易に分解して酸素分子と酸素原子を生成します。

そして、生成された酸素原子同士も反応して酸素分子となるので、最終的には酸素分子だけになります。

オゾンの半減期(濃度が2分の1になるのにかかる時間)は16時間なので、少し時間はかかりますが、使用後は放置しておけば分解して酸素分子となり、残留しないことになります。

気体のオゾンを利用する場合は、使用後に換気を行うことで無くなるまでの時間を早めることが可能です。

ここでは、オゾン(オゾン発生器)が養豚農場の衛生環境改善おいてどのように役立てることができるのかを考えてみます。

オゾン発生器とは、空気を材料としてオゾンを人工的に発生させる機器です。オゾン発生器では、主に「高濃度の気体オゾンを発生させて放出する」ことと「オゾンを水に溶け込ませてオゾン水を生成する」ことが可能です。

空気を材料としているので、電源さえあればオゾンを利用することが可能になります。

高濃度の気体オゾンを発生させるオゾン発生器を利用することで、施設内の部屋や倉庫など密閉できる空間の空気全体を隅々まで除菌することが可能です。
気体オゾンを利用することによって、天井や隙間など人の手の届かない所まで除菌することができます。

養豚農場の場合、以下の場所で利用可能です。
畜舎内
農機具庫
飼料庫
施設内の部屋廊下
農場を出入りする車両内

[除菌方法]
1.除菌対象の部屋から人や家畜など、オゾンに晒させてはいけないものを外に移動させる(オゾンは高濃度になると人体に有害となります)
2.部屋内でオゾン発生器を稼働させ、高濃度の気体オゾンを放出して部屋中の空気に行きわたらせる
3.部屋を密閉し、一定時間待機する
4.待機後、残留オゾンを外に逃がすために換気を行う

オゾンクラスターを使用している様子

一部の農機具や畜舎内のケージ、衣服等は空気と一緒にまとめて除菌することが可能です。
注意点として、高濃度オゾン発生器は必ず人や家畜のいない空間で使用しなければなりません。

オゾン発生器には、オゾン水を人工的に生成することができるものもあります。

オゾン水は主に噴霧器や消毒槽、霧吹き等に充填する除菌液として利用可能です。

物品や床、壁等を洗浄した後に除菌液として使うことで除菌を行うことができます。

養豚農場においては、以下のような場面で利用可能です。

カートやスコップ、ケージ等の除菌
人の出入りの際の手や指の除菌
踏み込み消毒槽による靴の除菌
糞便や汚れ等の清掃洗浄後の除菌

オゾン水は、オゾン水生成器によって水道水等の水にオゾンを溶け込ませることによって生成可能です。

オゾンバスターを使用している様子

オゾンは生成後、徐々に分解して濃度が下がっていくため、オゾン水の生成後は早めに使用する必要があることに注意してください。

また、タイヤなど天然ゴム製に対しては劣化を招く恐れがあるので使用しないことをお勧めします。

以上、養豚現場において除菌用途でオゾンを活用する方法を考えてみました。

タイヤの例など、すべての場面で利用できるわけではありませんが、既存の消毒薬に加えて十分に活躍が期待できる除菌方法だと思います。

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