イチゴの残留農薬は洗い方でどこまで落ちる?水道水・オゾン水・超音波・煮沸を比べた研究結果
イチゴは皮をむかずにそのまま食べる果物です。だからこそ「残った農薬を、家庭でどこまで落とせるのか」が気になる方は多いと思います。
この記事では、イチゴに残る16種類の農薬を対象に、水道水での洗浄・オゾン水での洗浄・超音波洗浄・煮沸という4つの方法を比べた公開研究の結果を紹介します。どの方法がどの農薬に効きやすかったのか、なぜ落ちやすい農薬と落ちにくい農薬があるのか、数値とあわせて整理します。あわせて、この結果を家庭や現場で受け取るときに知っておきたい前提もお伝えします。
この研究が調べたこと|イチゴの残留農薬と4つの洗浄法
イチゴはビタミンやミネラルを多く含み、低カロリーで抗酸化物質に富む果物として知られています。一方で、栽培中には病害虫を防ぐために殺菌剤や殺虫剤が使われることがあり、その一部が果実に残ることがあります。
この残留農薬をできるだけ減らすために、洗浄や加熱などのいくつかの方法が試されてきました。今回紹介するのは、ポーランドの研究チームが行い、2016年に学術誌に発表した比較研究です(Lozowicka et al., 2016)。
この研究では、イチゴに含まれる16種類の農薬(殺菌剤10種類と殺虫剤6種類)を対象に、次の4つの処理がどれだけ農薬を減らせるかを、処理時間を変えながら調べています。
- 水道水での洗浄
- オゾン水での洗浄
- 超音波洗浄
- 煮沸
なお、これはオゾンマートが自社で行った実験ではなく、第三者が公開した研究の結果です。あくまで「ある研究で示された結果」として読んでいただくのが正確です。
そもそもイチゴに農薬が残りやすいのはなぜか
結果を見る前に、なぜイチゴに農薬が残りやすいのかを押さえておくと、後半の数値が理解しやすくなります。
結実期間が短く、栽培中に農薬が使われやすい
イチゴは受粉から収穫までの期間が短く、その間に病気や害虫の被害を受けやすい果物です。代表的な病害として灰色かび病などがあり、害虫の被害も知られています。
これらを防ぐために、栽培では殺菌剤や殺虫剤が使われることがあります。その結果、収穫されたイチゴに農薬が残留する可能性が出てきます。
表面に残る農薬と、内部に入り込む農薬がある
農薬には、果実の表面に付着するタイプと、植物の組織内部に浸透して全体に行き渡るタイプ(全身性の薬剤)があります。
この違いは、洗浄での落ちやすさに直結します。表面に付いた農薬は洗い流しやすい一方、内部に浸透した農薬は表面を洗うだけでは落としにくくなります。この点は、後半の結果を読むときの重要な前提になります。
検証の方法と条件|何を・どう測ったか
研究では、まず無農薬栽培のイチゴに、評価対象となる16種類の農薬を散布しました。そのうえで、収穫したイチゴに4つの処理を行い、農薬がどれだけ減ったかを測定しています。
主な条件は次のとおりです。
- 各処理とも、サンプル200gを使用
- 処理時間は1分・2分・5分の3段階
- 水道水洗浄:塩素を含む水道水(約20℃)に浸す
- オゾン水洗浄:オゾン発生器で生成したオゾン水(最大1mg/Lのオゾン濃度)に浸す
- 超音波洗浄:水道水を入れた超音波洗浄器(40kHz)で処理
- 煮沸:100℃の沸騰水に浸す
- 農薬の量はガスクロマトグラフィーで分析
結果を表すために、この研究ではPF(加工係数)という指標が使われています。これは、未処理のイチゴに含まれる農薬量と、処理後の農薬量を比べた値です。
- PFが1より小さいほど、処理によって農薬が減ったことを意味します
- PFが1より大きい場合は、処理後にかえって残留量が増えたことを意味します
以降の数値はすべて、この研究の条件下で5分間処理した場合を中心に紹介します。
4つの洗浄法で残留農薬はどれだけ減ったか
研究では、いずれの方法でも処理時間を5分に延ばすほど農薬が減る傾向が確認されました。ここでは方法ごとに、特徴的な結果を見ていきます。
水道水での洗浄
水道水での洗浄でも、5分間の処理で農薬が大きく減るものがありました。
最も効果が大きかったのはクロルピリホスという殺虫剤で、約68%の減少(PF=0.32)が確認されています。次いでアセタミプリドやフェンヘキサミド(PF=0.43)などでも比較的大きく減りました。全体では、3種類の殺菌剤と3種類の殺虫剤で濃度が半分以下になっています。
一方で、効果が小さかった農薬もありました。たとえばブピリメートはPF=0.80で、減少幅は限定的でした。
オゾン水での洗浄
オゾン水での洗浄も、5分間の処理で最も効果が大きくなりました。
この研究では、オゾン水処理はクロルピリホスに対して最も強く働き、約75%の減少(PF=0.25)が見られました。ボスカリドやアセタミプリドでもPF=0.37と、はっきりした減少が確認されています。
ただし、すべての農薬に同じように効いたわけではありません。テトラコナゾールはPF=0.64で約36%の減少にとどまり、ブピリメートなどでもはっきりした効果は確認されませんでした。研究では、内部に浸透する全身性の農薬は、表面に働くオゾン水では落としにくいと考察されています。
16種類の農薬全体で見ると、この条件ではオゾン水のほうが水道水よりも除去効果が大きい傾向が示されました。
超音波洗浄
この研究の4手法の中で、全体として最も農薬除去効果が大きかったのは超音波洗浄でした。
アルファ-シペルメトリンに対しては約91%の減少(PF=0.09)、ピラクロストロビンで約89%、テトラコナゾールで約85%など、70%を超える高い減少を示した農薬が複数ありました。研究では、すべての農薬でPFが0.55未満だったと報告されています。
研究では、超音波によって水中に多数の微小な気泡が発生し、それがイチゴ表面の細かなくぼみに入り込んで農薬を引き剥がしたためと考察されています。なお、超音波洗浄に関する研究はまだ多くないため、今後さらに検証が必要な方法と位置づけられています。
煮沸
煮沸でも、5分間の処理で多くの農薬が大きく減りました。最も減少が大きかったのはピラクロストロビンで、約93%の減少(PF=0.07)と、この研究の全条件中で最大の減少を示しています。
ただし、煮沸には注意すべき結果もありました。ピレスロイド系のアルファ-シペルメトリン、デルタメトリン、ラムダ-シハロトリンという3種類の殺虫剤では、PFがそれぞれ1.02・1.32・1.70と1を超え、処理後にかえって残留量が増えていました。研究では、煮沸中にイチゴから水分が蒸発し、これらの農薬が果実内に濃縮された可能性が指摘されています。
数値から読み取れる「落ちやすさ」の差と理由
ここまでの結果を見ると、同じ処理をしても農薬によって落ち方が大きく違うことがわかります。その背景には、農薬の性質が関係していると考えられます。
水に溶けやすい農薬ほど落ちやすい
研究では、水に溶けやすい農薬ほど、水を使った洗浄で落ちやすい傾向が示されました。たとえば水に溶けやすいアセタミプリド(PF=0.43)は、水に溶けにくいデルタメトリン(PF=0.73)より落ちやすい結果でした。
ただし例外もあり、水に溶けやすくても落ちにくい農薬がありました。研究では、散布後に農薬が果実のどこに移動したかなどが影響している可能性があると考察されています。
内部に浸透する農薬は落としにくい
前半でふれた「表面に残る農薬」と「内部に浸透する農薬」の違いは、結果にもはっきり表れました。
表面に付着するタイプのクロルピリホスは、水道水でもオゾン水でも大きく減りました。一方、果実内部に浸透するテトラコナゾールなどの全身性の農薬は、表面を洗う方法では落としにくいことが確認されています。表面を洗う洗浄には、こうした限界があると言えます。
煮沸で残留が増えるケースがあるのはなぜか
煮沸は多くの農薬を減らしましたが、一部のピレスロイド系殺虫剤では残留量が増えました。これは、加熱で水分が蒸発した分だけ農薬が相対的に濃縮されたためと考えられています。
つまり「加熱すれば必ず農薬が減る」とは言い切れず、農薬の種類によって結果が分かれるということです。
この結果を家庭や現場で応用するときの前提
ここまでの数値は、家庭での農薬対策を考えるうえで参考になります。ただし、そのまま自宅の結果に当てはめる前に、いくつか前提を確認しておくことが大切です。
まず、これはオゾンマートの自社検証ではなく、第三者が公開した研究の結果です。特定の機器・濃度・時間・サンプルという限られた条件で得られた数値であり、すべての家庭環境にそのまま当てはまるわけではありません。
たとえばオゾン水の場合、研究では最大1mg/L程度のオゾン濃度が使われています。家庭やお店で使う機器によって生成できる濃度や水量は異なるため、同じ濃度・条件を再現できるとは限りません。オゾン水を扱う機器には、家庭向けのものから業務用まで幅があり、生成できる濃度や使い方の前提もそれぞれ異なります。機器を選ぶ際は、製品ごとの仕様や使用条件を確認することが前提になります。
また、この研究はイチゴを対象にしたものです。果物や野菜は表面の形状や農薬の付き方が異なるため、ほかの食材に同じ結果が当てはまるとは限りません。
イチゴの残留農薬対策で押さえておきたい確認ポイント
最後に、この研究結果をふまえて、イチゴの洗い方を考えるときに確認しておきたい観点を整理します。
- どんな農薬かで落ち方が変わる:表面に付く農薬は洗いやすく、内部に浸透する農薬は表面を洗うだけでは落としにくい
- 処理時間で差が出る:研究では、いずれの方法も時間を延ばすほど減る傾向だった
- 加熱は万能ではない:煮沸で大きく減る農薬がある一方、かえって残留が増える農薬もあった
- 数値は条件つきの結果:機器・濃度・時間などの条件が変われば、落ち方も変わりうる
- 食材によって結果は異なる:イチゴでの結果を、ほかの食材にそのまま当てはめない
家庭でできる現実的な対応としては、まず流水でよく洗うことが基本になります。そのうえで、より念入りに対策したい場合に、オゾン水の利用などが選択肢の一つとして挙げられます。どの方法を選ぶ場合も、「自分が落としたい対象は表面の汚れか、それとも内部に入り込んだものか」という視点を持っておくと、過度な期待も不安も持たずに判断しやすくなります。
よくある質問
イチゴの残留農薬は水洗いだけでも減りますか?
はい。今回紹介した研究では、水道水で5分間洗うと農薬が大きく減るものがありました。ただし落ち方は農薬の種類で差があり、表面に付くタイプは落ちやすく、果実の内部に浸透するタイプは落としにくい結果でした。家庭ではまず流水でよく洗うことが基本になります。
オゾン水と水道水では、どちらがよく農薬を落としましたか?
この研究の条件では、16種類全体でオゾン水のほうが除去効果が大きい傾向でした。特にクロルピリホスで約75%減りました。ただし内部に浸透する農薬には効きにくいなど、農薬ごとに差があります。あくまで特定の機器・濃度・時間で得られた結果である点に注意が必要です。
煮沸すれば残留農薬は確実に減りますか?
いいえ。多くの農薬は減りますが、一部の殺虫剤はかえって増える結果でした。ピレスロイド系の3種類では加工係数が1を超え、加熱で水分が蒸発して農薬が濃縮された可能性が指摘されています。加熱すれば必ず減るとは言い切れず、農薬の種類によって結果が分かれます。
どの洗浄法がいちばん農薬を落としましたか?
この研究では、超音波洗浄が全体として最も除去効果が大きい結果でした。すべての農薬で加工係数が0.55未満でした。ただし研究例はまだ少なく、今後の検証が必要な方法とされています。いずれの方法も、特定の条件下で得られた結果である点には注意が必要です。
家庭でオゾン水を使うには何が必要ですか?
オゾン水は専用の生成器で作れ、家庭向けから業務用までさまざまな機種があります。生成できる濃度や扱える水量は機種ごとに異なります。使いたい用途や水量に合うか、製品仕様や使用条件を確認したうえで選ぶことが前提になります。オゾン水生成器の一覧
