オゾン(O3)とは酸素(O2)の同位体で、酸素にもう一つOがくっついた化学式O3で表されます。

オゾンは発生器で容易に発生でき、抗菌・抗ウイルス効果を示し、すばやく空気中の酸素に戻ることができるため、除菌と消毒ができる地球にやさしい抗菌物質として注目されています。

一般家庭での除菌・抗菌目的での使用に加えて、オゾンは医療現場でオゾン療法(Ozone therapy)として使用されます。
特に細菌感染やウイルスの感染に効果を示し、抗生物質に対して耐性を持つ菌に対しても使用できるため、医学界からも注目されています。

オゾン療法

オゾン療法に関して、概要は理解いただけましたでしょうか。
オゾン療法の応用範囲から医療現場での課題、その解決策、簡単な歴史までが非常にコンパクトにまとまっています。

ただ、抄録という場所での記述は鵜呑みにしてはいけない部分があります。
なぜなら、抄録での文章は一般的に参考・引用文献がありません。

結果として筆者の言いたいことの概要が簡潔に記述されますが、どのレベルの真実かの見極めが難しいのです。
そこでより気になった箇所は本文にしっかりと目を向ける必要があります。

彼らは本文中では次の7つの項目でオゾン療法の関連研究をまとめています。

1.オゾン療法の歴史(HISTORY OF OZONE THERAPY)
2.SARSとオゾン(SARS AND OZONE)
3.メカニズムとアクション(MECHANISM OF ACTION)
4.治療試験 (CLINICAL TRIALS)
5.オゾン療法の優位性(ADVANTAGE OF OZONE THERAPY)
6.オゾン療法の非優位性(DISADVANTAGES OF OZONE THERAPY)
7.近年の研究の進展(RECENT DEVELOPMENT)

ここでは抄録の内容も踏まえながら、オゾン療法をより詳細に説明するためにオゾン療法の優位性と近年の研究の進展の2つのセクションを紹介したいと思います。

オゾン療法の優位性
オゾンによる糖尿病合併症の抑制
糖尿病合併症は体内の酸化ストレスが関与するとされ、オゾンは抗酸化システムを活性化し、血糖値のレベルに影響をおよぼすことがわかっています。

オゾンはスーパーオキシドジスムターゼという酵素を活性化することによって有機過酸化物を正常化し、酸化ストレスの発生を防ぎます。

Hazucha MJ, Bates DV, Bromberg PA. Mechanism of action of ozone on the human lung. J Appl Physiol. 1989;6
7:1535–41. [PubMed] [Google Scholar]
Martínez-Sánchez G, Al-Dalain SM, Menéndez S, Re L, Giuliani A, Candelario-Jalil E, et al. Therapeutic efficacy of o
zone in patients with diabetic foot. Eur J Pharmacol. 2005;523:151–61. [PubMed] [Google Scholar]

オゾンによるHIVウイルスの不活性化
オゾンは試験管内でHIVを不活性化し、この反応が濃度依存的であることもわかっています。
HIVを不活性化するオゾンの濃度は細胞への毒性がありません。
この不活性化はHIVのp24というコア蛋白質を減少させることによります。

Carpendale MT, Freeberg JK. Ozone inactivates HIV at noncytotoxic concentrations. Anitiviral Res. 1991;16:281
–92. [PubMed] [Google Scholar]

オゾンによる免疫系の向上
オゾンはサイトカインの分泌を増やすことで免疫系のはたらきをよくすることも知られています。

Bocci V. Ozonization of blood for the therapy of viral diseases and immunodeficiencies: A hypothesis. Med Hypoth
esis. 1992;39:30–4. [PubMed] [Google Scholar]

オゾンによる抗菌・防カビ効果
試験管内の研究では、オゾンはアシネトバクター、クロストリジウム・ディフィシレ菌とメチシリン抵抗性ブドウ球菌の濃度を減少させることが知られているため、感染防御のためにオゾンが用いられます。

Sharma M, Hudson JB. Ozone gas is an effective and practical antibacterial agent. Am J Infect Control. 2008;3
6:559–63. [PubMed] [Google Scholar]

酸素とオゾンの混合物はカリウムやアコニチンによる不整脈の発生を遅延させることができることが動物実験で示されています。
近年の研究の進展(RECENTDEVELOPMENT)

オゾンによる神経痛への治療
外科的神経損傷による神経因性疼痛モデルである神経枝結紮損傷を用いたマウス実験の結果によると、皮下へのオゾン注入は神経因性疼痛型の行動を減少させました。

このオゾンの作用のメカニズムは未だ明らかではありませんが、オゾンが異痛症の発症と維持に関連する遺伝子発現を制御に重要なはたらきを示すからだと考えられています。

Fuccio C, Luongo C, Capodanno P, Giordano C, Scafuro MA, Siniscalco D, et al. A single subcutaneous injection o
f ozone prevents allodynia and decreases the over-expression of pro-inflammatory caspases in the orbito-frontal c
ortex of neuropathic mice. Eur J Pharmacol. 2008;603:42–9. [PubMed] [Google Scholar]

オゾン療法まとめ

オゾンは抗菌・抗ウイルス効果を有していることはもちろんですが、神経痛へも効果がある可能性があるのは驚きですね。

しかしながら、動物実験レベルでのオゾン療法の効果はまだ研究が少なく、メカニズムはもちろんその効果も検証が充分ではありません。オゾンの神経痛への効果やさらなる可能性の開拓に向けてまだまだ年月が必要なようです。

オゾンの研究領域はメジャーな研究領域である神経変性疾患や癌と比較すると関連論文の数も数万分の1といったところかと思います。

オゾン療法の発展のためにはより研究領域が発展し、多くの質の高い研究論文が執筆されることが重要であると思います。