感染すると肺炎に!?温泉や銭湯などの入浴施設で増殖するレジオネラ菌の除菌方法
レジオネラ属菌は自然環境に存在する菌ですが、生活環境の中でも混入して増殖することがあります。
特に温泉や銭湯などの公衆浴場では、増殖しやすい条件が整っており、感染のリスクが高くなっています。
ここでは、そんなレジオネラ菌の特徴と対策法についてご紹介したいと思います。
レジオネラ菌とは?感染するとどうなるの?
レジオネラ菌は、土壌や河川などの自然環境中に存在する細菌の一種です。
生活環境の中では、主に循環水を利用する浴槽や冷却塔、給湯器等の水の中で増殖します。
人へはレジオネラに汚染された水から発生したエアロゾル(気体中の微小な液体)を吸入することで感染します。
レジオネラ属菌による感染症には、一過性の発熱を引き起こすポンティアック熱と肺炎症状を引き起こすレジオネラ肺炎の2つの病型があります。
レジオネラ肺炎を発症すると、全身倦怠感や高熱、消化器症状に加え、四肢の振戦等の中枢神経系の症状も起こり、適切に治療されなければ致死率が高くなるという大変危険な感染症となっています。
また、高齢者や、基礎疾患や治療の影響などで感染防御機能が低下した人はレジオネラ肺炎を発症するリスクが高くなります。
(東京都感染症情報センター「レジオネラ症 Legionellosis」)
温泉・銭湯などでは特に感染に注意!
自然環境の中に存在するレジオネラ菌は、様々なものを媒介して生活環境の中に混入する可能性があります。
その中でも、レジオネラ菌が増殖しやすい場所と言われているのが、銭湯や温泉などの公衆入浴施設で、特に循環式で運用されているものです。
循環式浴槽を利用する高齢者施設やプールなども同じように増殖しやすいと考えられます。
このような入浴施設では、ヒト由来の有機物を栄養分として微生物が増殖・定着しやすく、浴槽や配管に生物膜が形成されやすくなっています。
そして、レジオネラ菌も、この生物膜内においてアメーバを宿主として顕著に増殖するようになります。
さらに、生物膜やアメーバは単純な塩素剤による消毒に対して耐性があり、レジオネラ菌の殺滅はこれらを除去しない限りは困難となっています。
このように増殖するレジオネラ菌の汚染は、浴槽や配管だけでなく貯湯タンクや浄化装置・ろ過装置などにも及びます。
(厚生労働省「レジオネラ症の知識と浴場の衛生管理」)
清掃や衛生管理の行き届いていない入浴施設では、レジオネラ菌が増殖してレジオネラ菌の大量感染を招く恐れがあり、適切な対策が求められています。
レジオネラの増殖を防止するために行える対策
入浴施設におけるレジオネラの増殖の防止のために重要なのは、定期的に清掃・換水を行って水中のレジオネラを排除すること、また浴槽や配管の洗浄・除菌に加えて微生物による生物膜を除去してレジオネラの増殖要因を排除することです。
これらは銭湯や温泉など運用にあたり厳格な衛生管理が求められる場所では通常行われていることですが、それら以外の高齢者施設などで利用される循環式入浴施設でも必要だと思われることなので、今一度確認しましょう。
レジオネラの知識と増殖防止対策については厚生労働省からも「防止対策マニュアル」が公表されています。
[レジオネラの増殖防止のための衛生管理対策例]
・浴槽の水を定期的に入れ替える。
・浴室浴槽内の清掃を定期的に実施する。また塩素剤などによる洗浄消毒を行う。
・浴槽だけでなく、ろ過装置消毒装置配管など循環系の内にある設備の洗浄消毒も行う。
・浴槽やろ過装置に存在する髪の毛垢生物膜を定期的に点検し、除去する。
以上のように、レジオネラの増殖防止のためには、その温床となるものを除去したうえで、さらに消毒を行って残留しているレジオネラ菌、およびその他の微生物を殺滅させることが重要です。
消毒には高温処理や過酸化水素、塩素剤による消毒などがありますが、中には扱いに危険が伴ったり、費用が高額になってしまうものもあります。
ここでお勧めしたいのが、オゾン発生器による除菌法です。
オゾンとは?オゾンの特徴と除菌力をご紹介
オゾンとは、除菌や脱臭用途で広く利用されている物質です。
O₃という化学式で表され、強い酸化力を持っているのが特徴です。
オゾンは、その強い酸化力を利用することで除菌や脱臭を行うことができます。
オゾンの酸化力と除菌のメカニズムについては以下のように説明できます。
オゾンは容易に分解して酸素分子(O₂)と酸素原子(O)を生成します。
このうち、分離された酸素原子(O)は強い反応力を持っており、他の物質と結合して酸化させるという作用を持っています。
この酸化作用は、カビや細菌、ウイルス、有害物質を根本から分解して除去してくれます。
これがオゾンによる除菌のメカニズムです。
オゾンの除菌力はレジオネラ菌にも有効です。
また、使用後はすべて分解するのでオゾンが残留する心配はありません。
オゾン発生器を利用してレジオネラ菌対策を行う方法
オゾン発生器とは、オゾンを人工的に発生させ、除菌や脱臭を行うことができる装置です。
業務用や家庭向けに利用できるものも販売されており、入浴施設においてもオゾン発生器を活用した除菌法を導入することが可能です。
オゾン発生器では、主に気体のオゾンを放出して空気を除菌することと、オゾンを水に溶け込ませたオゾン水を生成して除菌液として活用することができます。
ここでは、オゾン水で局所的な洗浄・除菌を行った後、高濃度の気体オゾンで空気全体を除菌する方法をご紹介します。
オゾン水で洗浄・除菌を行う
水道水などの水に一定以上の濃度のオゾンを溶け込ませれば、十分な除菌効果を持ったオゾン水を生成することが可能です。
オゾン水は、市販のオゾン水生成器を使えば簡単に生成することができます。
画像:「オゾンバスター」でオゾン水を生成する様子
浴室・浴槽を清掃する際に、ぬめり等の汚れを取ったうえでオゾン水を吹きかける・流し込む・布で拭くなどを行って除菌しましょう。
拭き掃除の際にオゾンを染み込ませた布等を使用すれば、掃除と除菌を一度に行うことができます。
また、イスなどの備品に関しては、オゾン水につけ置くことでも除菌可能です。
高濃度の気体オゾンで浴室の空気全体を除菌する
市販のオゾン発生器には、高濃度の気体オゾンを放出できるものもあります。
レジオネラ菌は、エアロゾル(気体中の微小な液体)を吸入することが感染の原因となりますので、空気中など浴室のあらゆる所にレジオネラ菌が存在すると想定できます。
従って、高濃度オゾン発生器を用いて、換水時などに以下のような手順で浴室全体の除菌を行いましょう。
1.浴室を無人にする。
2.浴室内で高濃度オゾン発生器を稼働させて、高濃度の気体オゾンを空気中に放出する。
3.浴室を閉め切って一定時間待機する。
4.待機後、換気してまだ分解していないオゾンを外に出す。
画像:「オースリークリア3」で浴室にオゾンを散布
これで浴室内空気の除菌は完了です。
気体を利用することで消毒液では除菌が困難なもの・場所を除菌することが可能になります。
注意点として、高濃度の気体オゾンは人体に有害となりますので、人がいる場所で使わないように気を付けましょう。