アデノウイルスのウイルス学的な知見と感染症予防に関連する先行研究の紹介

プール熱を引き起こすことでも知られるアデノウイルスですが、オゾンによってアデノウイルス感染症を予防することができるのでしょうか。

風邪症候群と関連するウイルスの中で、メジャーなウイルスであるアデノウイルスが引き起こす感染症、アデノウイルスのウイルス学的な知見をご紹介。

オゾンによるアデノウイルスの感染症予防に関連する先行研究を紹介させていただき、オゾンがアデノウイルス感染症の予防に効果を示すのか解説させていただきます。

目次

オゾン・オゾン水とは

アデノウイルスとは
 ・アデノウイルス概論
 ・アデノウイルス感染症
 ・アデノウイルスのウイルス学的特徴
 
アデノウイルスの多様性

アデノウイルス感染のオゾンによる予防

オゾンとアデノウイルス感染〜先行研究〜

まとめ

イメージ画像

オゾン・オゾン水とは

抗菌・抗ウイルス図

オゾン(O3)とは酸素(O2)の同位体で、酸素にもう一つOが結合した化学式O3で表されます。

オゾンは発生器で容易に発生でき、抗菌・抗ウイルス効果を示し、すばやく空気中の酸素に戻ることができるため、除菌と消毒ができる地球にやさしい抗菌物質として注目されています。

オゾン水とはオゾンが溶けこんだ水です。オゾン水のオゾンは酸化によって除菌した後に水に戻ることができるので、こちらも人体への害を考えずに使うことができる消毒・除菌薬として利用されています。

アデノウイルスは風邪を引き起こすウイルスとして知られていますが、オゾンによって死滅できることが報告されています。

アデノウイルスとは

研究イメージ画像

アデノウイルスの説明は以下のニューヨーク州立大学のグループがまとめたレビュー論文を参考に記述させていただきます。
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また、アデノウイルスによる疾患(咽頭結膜熱)に関しては国立感染症研究所のページを参考に記述させていただきます。

アデノウイルスの構造はProtein Data Bank(https://pdbj.org/mom/132)の記事を参考に記述させていただきました。

アデノウイルス概論

アデノウイルス図

出典:Wikipedia

アデノウイルスの構造。正20面体の頂点に位置する12個のペントンカプソマー(スパイク,1)と、各面に配置された総数240個のヘキソンカプソマー(2)とで構成されたカプシド、およびそれに覆われたウイルス核酸(線状二本鎖DNA, 3)からなる。

アデノウイルスは二本鎖のDNAウイルスでライノウイルスと並んでかぜ症候群の原因ウイルスとして知られています。
adenoは日本語で腺を意味し、adenovirusは扁桃腺(adenoid)由来の細胞から単離されたことにその名を冠しています。
ヒトへの感染として最も頻度が高いのは上気道ですが、その他消化器系や眼科系、中枢神経系への感染も確認されています。

プール

アデノウイルスが引き起こすメジャーな疾患としては咽頭結膜熱(プール熱)があります。
臨床症状としては以下、国立感染症研究所ホームページより引用。

発熱で発症し、頭痛、食欲不振、全身倦怠感とともに、咽頭炎による咽頭痛、結膜炎にともなう結膜充血、眼痛、羞明、流涙、眼脂を訴え、3~5日間程度持続する。
眼症状は一般的に片方から始まり、その後他方にも出現する。
また、結膜の炎症は下眼瞼結膜に強く、上眼瞼結膜には弱いとされる。
眼に永続的な障害を残すことは通常はない。
また、頚部特に後頚部のリンパ節の腫脹と圧痛を認めることがある。
潜伏期は5~7日とされている。
ただし、生後14日以内の新生児に感染した場合は全身性感染を起こしやすいことが報告され、重症化する場合があることが報告されている。

引用元:国立感染症研究所ホームページ

とされています。少し解説させていただきますと、先程のアデノウイルスの感染場所で言いますとまずは扁桃腺から始まり、眼科系に、そして頸部リンパ節への感染が認められるとしています。
また、新生児の場合ですと免疫力が低いため、全身のリンパ節に感染してしまうこともあるようで、非常に注意が必要な疾患であることが読み取れます。

アデノウイルスの感染症としては他に性感染症としてのアデノウイルス性尿道炎やアデノウイルスによる流行性角結膜炎が2017年に報告されています。いずれの場合も成人では生命に危険を及ぼすケースは少ないですが、近年でもさらに新しいアデノウイルス感染症が発見されていることから対策を講じる必要があるウイルスであると言えるでしょう。

アデノウイルスのウイルス学的特徴

アデノウイルスは二本鎖DNAウイルスでカプシドは正二十面体をしており、240個のヘキソンと呼ばれる蛋白質が3つずつでユニットを作り構成しています。エンベロープは持っていません。

各頂点からはそれぞれ長い突起(図中緑)が出ている構造を取っています。感染の際にはこの突起を用いて標的細胞の受容体分子と結びつきます。これまで発見されたアデノウイルスが感染に用いるヒトのメインな受容体分子としてはCAR(coxsackie and adenovirus receptor)とCD46が挙げられます。

ARは機能未知で様々な細胞に発現しているとされており、CD46は免疫系の補体反応と呼ばれる反応に関与する因子で、麻しんウイルスの受容体としても知られています。このあたりの受容体の話やウイルスの構造的や蛋白質構造そのものに興味がある方は過去記事(オゾンとロタウイルス、オゾンとウイルス、なぜオゾンが細菌とウイルスの両方に効果があるのか)を御覧ください。

アデノウイルスの多様性

アデノウイルスは引き起こす疾患の違いや複数の感染経路があることからもわかるように50種類を超える非常に多くの血清型、遺伝型を持っています。
それぞれ疾患の関連に関しては国立感染症研究所の記事にまとまっていますので、そちらを御覧ください。
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アデノウイルス感染のオゾンによる予防

ウイルスイメージ画像

では、これまでに説明させていただいたようなアデノウイルスが感染を引き起こす、その予防に対してオゾンは効果的でしょうか。

オゾンはエンベロープを持たないウイルスよりもエンベロープを持つウイルスへの方が効果が高いことが先行研究から示唆されています。
オゾンとロタウイルスの記事で詳細記載)

ここで、アデノウイルスはエンベロープを持っていませんので、ウイルス学的な観点からはオゾンの効果は低いことが考えられます。
しかしながら、オゾンは風邪症候群を引き起こすウイルス一般に消毒効果があることが示唆されています(オゾンと風邪ウイルス)ので、オゾンはアデノウイルスに対しても何らかの効果があることが期待されます。

また、オゾンがなぜウイルスに対して感染を予防する効果があるかというと、オゾンが活性酸素として膜に対して攻撃を行うからです。
(オゾンが細菌とウイルスの両方に効果がある理由)
では、たとえ効果が低かったとしてもオゾンはアデノウイルス感染の予防にも何らかの貢献を果たすと考えられないでしょうか。

オゾンとアデノウイルス感染〜先行研究〜

研究イメージ画像

Water Res. 2005 Sep;39(15):3650-6.
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オゾンによる腸感染性アデノウイルスと猫カルシウイルスの不活性化

ネブラスカ大学の研究グループによる研究論文をみると、彼らは非常に低濃度のオゾン(0.01 mg/l)含有のオゾン水で腸感染性アデノウイルスを不活性化することができることを報告しています。

もちろん彼らの研究条件下において認められた現象なので、一般化には注意が必要ですが、オゾンはアデノウイルス感染の予防に一定の効果を示しそうです。

ヨーテボリ大学の外観

画像:Wikipedia(ヨーテボリ大学)

Int J Hyg Environ Health. 2018
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一般的な下水処理とオゾン処理による人間への病原性を持つウイルスへの様々な除去効果

スウェーデンのヨーテボリ大学の研究グループの論文で、ヒトに対して病原性を持つウイルスを一般的な下水処理とそれにオゾン処理を加えた場合でウイルス除去効率が良くなるかを検討した論文です。

まず、一般的な下水処理でヒトへの感染性を含むほとんどのウイルスが死滅することを彼らは見出しました。さらに、オゾン処理を行うことでほとんどのウイルスが死滅することを彼らは示しました。

彼らはさらに一般的な下水処理とそれに続くオゾン処理によるウイルスの死滅をReal-time PCR法によって定量的に評価しました。すると、彼らが評価した21種類のウイルスの中でアデノウイルスとパロウイルスのみが一般的な下水処理に対して抵抗を示し、更にオゾン処理によってもアデノウイルスのみがわずかに抵抗性を示すことが見いだされました。

彼らはアデノウイルスの中で49、50、51/52の4種類を3つの分類として評価していますが、それぞれ血清型、遺伝子型によってもオゾン処理の効果が異なるようです。ただ、彼らは考察欄でオゾン処理によるウイルスの死滅効果を強調し、オゾン処理を下水処理に取り入れるべきであると主張しています。

オゾンのアデノウイルスへの効果は一部限定的である部分はあれど、オゾンのウイルス全般への効果に疑う余地は無いということでしょう。

オゾンによるアデノウイルスの感染予防は完璧というわけではないですが、効果を示すことには間違いはないようです。ただ、オゾンに限らずアデノウイルスは感染予防が難しいウイルスであり、それゆえ感染症が広がってしまうという背景があるようです。

まとめ

オゾンによるアデノウイルスの予防には一定の効果があるものの、アデノウイルス自体が感染予防が難しいウイルスにあたりそうです。
しかしながら、他の消毒・殺菌方法と合わせてオゾンを使用することで間違いなくアデノウイルス感染の予防につながるので、オゾンあれば憂いなしとも言えるのではないでしょうか。