オゾンコラム

オゾン水・オゾンガスは野菜の保存に使える?検証データでわかる効果と条件

オゾン水・オゾンガスは野菜の保存に使える?検証データでわかる効果と条件

収穫した野菜をできるだけ新鮮なまま届けることは、食の安全や安定供給につながる大切な課題です。野菜の鮮度が落ちる大きな原因のひとつが、表面に付いた微生物による腐敗だとされています。

そこで近年注目されているのが、強い酸化作用を持ちながら使用後に残りにくいオゾンです。この記事では、市販の野菜を使ってオゾン水洗浄とオゾンガス暴露の効果を調べた検証データをもとに、どんな条件で、どの程度の結果が得られたのかを整理します。効果の有無だけでなく、自分の現場で考えるときに何を確認すればよいかまで見ていきます。

なお、ここで紹介する内容は特定の条件下での検証結果です。すべての野菜や使い方にそのまま当てはまるわけではない点を、はじめにお伝えしておきます。

この検証で確かめたかったこと

野菜の鮮度低下と付着微生物の関係

野菜の品質が落ちる要因はいくつかありますが、なかでも影響が大きいのが付着した微生物による腐敗だとされています。一般に、野菜に付いている細菌の数は1gあたり10²〜10⁹個ほどに及ぶとされ、収穫から流通、陳列までの間にしっかりした洗浄が欠かせません。

このため従来はさまざまな薬剤が使われてきましたが、薬剤には残留や安全面の課題があり、使用を控えたい場面もあります。残りにくい方法が求められてきた背景には、こうした事情があります。

残留しにくい方法としてのオゾンへの着目

オゾンは強い酸化作用を持ち、反応後は酸素に戻るため、使用後に残りにくいという性質があります。この性質から、野菜の洗浄や保存に使えないかという検討が進められてきました。

オゾンには気体のオゾンガスと、それを水に溶かしたオゾン水があります。作用の元になるのは同じオゾンで、対象や使う場面に応じて選ばれます。本検証では、この2つを単独で、また組み合わせて使ったときの違いを調べています。

参照した調査・論文の位置づけ

この記事は、内藤博敬氏らによる調査・論文で報告された検証内容をもとに整理しています。キュウリを対象にオゾン水の食中毒予防効果を検証した論文(環境オゾン研究、2015年)と、国産野菜の貯蔵・保存・陳列を目的としたオゾン利用条件を検討した農畜産業振興機構(ALIC)の委託調査報告(2018年)が中心です。

検証は大きく2つの実験で構成されています。実験1はキュウリを使ったオゾン水濃度別の検証、実験2は複数の野菜を使ったオゾン水洗浄とオゾンガス暴露の保存試験です。

検証の前提|野菜に付く菌とオゾンの作用

野菜から検出された菌の種類と量

この検証では、野菜に付いている菌の種類も調べられています。キュウリからは8種類の細菌が同定され、その中には食中毒の原因になりうるサルモネラ属の菌も含まれていました。一部は人に由来すると考えられる菌で、栽培や袋詰めなどの過程で付着した可能性が指摘されています。

ほかの野菜でも、土壌由来とみられる菌や、流通の過程で付いたと推定される菌が確認されました。野菜の種類によって、付いている菌の量や種類が異なることが、検証の前提として押さえておきたい点です。

オゾンの酸化作用と「濃度×接触時間」という考え方

オゾンは、ほかの物質とすぐに反応して強い酸化作用を起こします。この作用の強さは、オゾンの濃度と、オゾンに触れている時間の積で考えると整理しやすくなります。

つまり、濃度が高いほど、また触れる時間が長いほど、菌を抑える働きは強くなる傾向があるということです。この関係は、気体のオゾンガスでも、水に溶かしたオゾン水でも同じように考えられます。

オゾン水とオゾンガスの位置づけの違い

オゾン水は水に溶けた状態なので、野菜を浸して洗うといった使い方に向きます。一方のオゾンガスは空間に広げて使うため、保存中の空間に作用させるといった使い方になります。

同じオゾンでも、触れさせ方が違うため役割が分かれます。この検証でも、洗浄にはオゾン水、保存中の作用にはオゾンガスという形で使い分けられています。

検証の設計と使用条件

実験1|キュウリと濃度別オゾン水の設計

実験1では、市販のキュウリを対象に、オゾン水の濃度を変えて洗浄効果を比べています。主な条件は次のとおりです。

  • オゾン水の濃度:0.5、1、2、4mg/Lの4段階
  • 洗浄方法:タッパー内で3回繰り返し洗浄
  • 比較対象:水道水での洗浄
  • 評価モデル:洗浄後のキュウリを塩分1%の浅漬け液に浸し、30℃で保存しながら菌の増え方を観察

浅漬けの塩分を1%にしたのは、別途行われた大腸菌の塩耐性チェックで、5%までは増殖し10%では増殖できないことが分かり、菌が増えやすい条件として設定されたためです。

実験2|複数野菜の洗浄とオゾンガス暴露の設計

実験2では、ゴーヤ、ミニトマト、ニンジン、ピーマン、ナスなどを対象に、洗浄方法とオゾンガス暴露の有無を組み合わせて保存試験を行っています。主な条件は次のとおりです。

  • 洗浄:水道水またはオゾン水(4mg/L)で3回
  • オゾンガス暴露:保存中の空間のオゾン濃度を0.05ppmに調整
  • 保存:室温(20℃±5℃)で密閉保存
  • 評価:保存中の生菌数の推移

オゾンガスの濃度0.05ppmは、作業環境基準を考慮して低めに設定された値です。高い濃度ではなく、抑えた濃度でどこまで作用するかを見ている点が特徴です。

使用機器・測定方法

オゾン水は専用のオゾン水生成装置で作られ、濃度はパックテストで処理直前に確認されています。オゾンガスはコロナ放電方式の発生装置で空間に供給されました。菌の数は培養による生菌数の測定で評価し、菌の種類は遺伝子解析で同定しています。数値はいずれもこれらの条件下で得られた結果である点に注意が必要です。

オゾン水洗浄でわかったこと

濃度による効果の差(実験1)

キュウリを使った実験1では、オゾン水の濃度によって結果に差が出ました。濁りの強さ(菌の増殖の目安)と、生物の活動量を示すATPの両方で評価しています。

  • オゾン水0.5・1mg/L:水道水と比べてわずかに濁度が下がる程度で、大きな違いはなし
  • オゾン水2・4mg/L:水道水と比べて濁度がはっきり下がり、菌の増殖が抑えられた

特に4mg/Lでは、培地に現れる菌のかたまり(コロニー)の数が、水道水の場合に比べて大きく少なくなりました。この検証では、ある程度の濃度があるオゾン水の方が、菌の増殖を抑える働きが強いという結果でした。

野菜の種類による除去率の違い(実験2)

実験2では、洗浄による菌の除去のされやすさが野菜によって違うことが分かりました。

  • 効果が大きかった:ゴーヤ、ニンジン(オゾン水洗浄で、洗浄前と比べてゴーヤは10倍以上、ニンジンは100倍以上の除去率。ニンジンは水道水洗浄と比べても約50倍
  • 効果が小さかった:ミニトマト、ピーマン、ナス(洗浄後も目立った減少は少なめ)

全体として、菌の除去率はオゾン水洗浄の方が水道水洗浄より大きい傾向でした。ただし、その効果の大きさは野菜の種類によって差がありました。

数値から読み取れること

この差は、野菜の表面の状態や、もともと付いている菌の量・付き方の違いによって生じたと考えられます。表面が複雑だったり、菌が入り込みやすい野菜では、洗浄だけで落としきりにくい場面があると読み取れます。

つまり、オゾン水洗浄は菌を減らす働きが期待できる一方で、洗浄だけですべての野菜に同じ効果が出るとは限らない、という点が見えてきます。

洗浄とオゾンガス暴露を組み合わせた4条件の比較

4条件の整理

実験2では、洗浄方法とオゾンガス暴露の有無を組み合わせ、次の4条件で保存中の菌の推移を比べています。

  • ①水道水で洗浄/オゾンガス暴露なし
  • ②オゾン水で洗浄/オゾンガス暴露なし
  • ③水道水で洗浄/オゾンガス暴露あり
  • ④オゾン水で洗浄/オゾンガス暴露あり

ここでの比較は、どれが優れているかという話ではなく、洗浄と保存中の作用がそれぞれどんな役割を持つかを見るためのものです。

野菜別の保存中の菌数推移

保存中の生菌数の動きには、野菜ごとに次のような傾向が見られました。いずれもこの検証条件下での結果です。

  • ゴーヤ:①〜③では保存中に菌数が大きく増加。④だけは増加がわずかにとどまった
  • ミニトマト:①で大きく増加。②③では増加が抑えられ、④では保存前より減少
  • ニンジン:オゾンガス暴露なしでは大きく増加。③④の暴露ありでは増加が抑えられた
  • ピーマン:オゾンガス暴露なしでは増加。④では菌の生育が確認されなかった
  • ナス:オゾンガス暴露なしでは増加。③で抑えられ、④では菌の生育が確認されなかった

ピーマンについては、もともとの菌数が少なかったため、④の結果が作用の強さによるものか、菌数が少なかったことによる誤差の範囲かは断定できないと報告されています。一方ナスは、もともと付着菌が多かったため、洗浄と暴露の組み合わせがよく働いたと考えられています。

洗浄とオゾンガス暴露が担う役割の違い

これらの結果からは、洗浄とオゾンガス暴露の役割の違いが読み取れます。洗浄は保存前に付着した菌をある程度減らす働き、オゾンガス暴露は保存中の菌の増殖を抑える働き、というように整理できます。

この検証の4条件の中では、オゾン水洗浄とオゾンガス暴露を組み合わせた④で、保存中の菌数の増加が最も抑えられる傾向が見られました。洗浄だけ、または保存中の作用だけよりも、両方を組み合わせたときに菌の増殖が抑えられやすかった、という結果です。

品質への影響|水分・栄養・見た目

水分含有量の変化と密閉系の課題

保存後の水分量も調べられています。水道水またはオゾン水で洗浄後に7日間オゾンガスに暴露したニンジンでは、元の含水量から約10%減少しました。それ以外の野菜では数%程度の減少にとどまり、オゾンガス暴露の有無による水分減少の差は、はっきりとは認められませんでした。

なお、密閉した容器の中でオゾンガスに暴露する方法では、野菜から水分が抜けやすいという課題が指摘されています。葉物のレタスやジャガイモは水分の減り方が大きく、この検証では対象から外れました。

ポリフェノール・ビタミンC・エチレンの結果

栄養成分については、ポリフェノールとビタミンCの含有量を分析した結果、保存の前後で目立った違いは認められませんでした。

また、野菜の追熟に関わるエチレンガスは、保存中に検出されませんでした。これはオゾンによってエチレンが酸化され、検出できる量を下回った可能性が指摘されています。

見た目(光沢・腐敗)の変化

見た目にも違いが出ました。ミニトマトとナスでは、オゾン水で洗浄したサンプルの方が光沢が強い傾向が見られました。これは表面に付いた有機物がオゾン水処理で除かれたためと推察されています。

ニンジンでは、水道水で洗浄してオゾンガス暴露なしで保存したサンプルの一部が黒く変色し、腐敗が見られました。一方、オゾン水処理かオゾンガス暴露、またはその両方を行ったサンプルでは、こうした腐敗は見られませんでした。

この結果を実環境で活かすときの前提

「特定条件下の結果」であることの確認

ここまでの結果は、特定の濃度・時間・容器・野菜での検証で得られたものです。濃度や接触時間、保存環境が変われば結果も変わります。数値をそのまま一般化せず、「この条件ではこうだった」という形で受け止めることが大切です。

オゾン水生成器とオゾン発生器は別物として考える

実環境で取り入れるときは、オゾン水を作る機器と、オゾンガスを発生させる機器が別物であることを押さえておきたい点です。洗浄に使うならオゾン水生成器、空間に作用させるならオゾン発生器、と用途で機器が分かれます。検証でも両者は役割を分けて使われていました。

機器の分類と使用条件

オゾン機器は一括りにできず、家庭用・業務用・兼用といった分類があります。使用条件も機器によって異なります。

オゾン水生成器は、気体のオゾンと異なり水に溶かして使うため、洗浄作業そのものに使いやすい機器です。一方、空間にオゾンガスを発生させる機器の中には、無人環境での使用を前提とした業務用の製品があります。

そのため、「オゾン=無人空間でしか使えない」と一律に考えるのではなく、どのタイプの機器を、どんな環境で使うのかを分けて考える必要があります。具体的な使い方や注意事項は、機器ごとの製品仕様で確認してください。

今後の課題=実環境での確認ポイント

検証では、いくつかの今後の課題も挙げられています。これらは、実環境で考えるときの確認ポイントにもなります。

  • 密閉系では水分が抜けやすいため、オゾン水の噴霧や開放系での保存など、別の方法も検討が必要
  • 流水中にオゾンを溶かして洗うと、より低い濃度でも効果が期待できる可能性がある
  • オゾン水の使い方や、機器の性能評価に関するガイドラインの整備が望まれる

薬剤による洗浄には、残留や漂白といった特性があり、扱いに配慮が必要な場面があります。残りにくいオゾンが検討される背景にはこうした違いがありますが、どの方法が適するかは対象や現場の条件によって変わります。優劣で決めるのではなく、用途に合わせて選ぶ視点が役立ちます。

オゾンを野菜の保存に取り入れるときの確認観点

最後に、この検証から見えてくる、オゾンを検討するときの確認観点を整理します。自分の現場や用途に当てはめて考える際の目安にしてください。

  • 対象の野菜:表面の状態や付着菌の量によって、洗浄での落ちやすさが変わる
  • 目的:付着菌を減らす「洗浄」なのか、保存中の増殖を抑えたいのかで、使う方法が変わる
  • 濃度と接触時間:作用の強さは濃度と触れる時間で考える。条件が変われば結果も変わる
  • 保存のしかた:密閉か開放かで、水分の抜けやすさや作用のしかたが変わる
  • 機器のタイプ:オゾン水生成器かオゾン発生器か、家庭用か業務用か兼用かを分けて考える
  • 製品仕様の確認:有人・無人を含む使用条件は、機器ごとの仕様で確認する

この検証では、オゾン水洗浄とオゾンガス暴露を組み合わせたときに、保存中の菌の増殖が抑えられやすい傾向が見られました。芽胞をつくる菌に対しても、低い濃度ながら作用を示す結果が報告されています。ただし、これらは特定条件下での結果です。実際に取り入れるときは、対象や環境、機器の条件を確認しながら検討することが、無理のない判断につながります。

よくある質問

オゾン水で野菜を洗うと菌は減りますか?

この検証では、ある程度の濃度のオゾン水洗浄で付着菌が減る傾向が見られました。ただし効果は野菜の種類によって差があり、ゴーヤやニンジンでは大きく、ミニトマトやピーマンでは小さめでした。濃度や接触時間などの条件によっても結果は変わるため、特定条件下での結果として捉えることが大切です。

オゾン水とオゾンガスはどう使い分けるのですか?

オゾン水は洗浄に、オゾンガスは保存中の空間に作用させる使い方が中心です。元になるオゾンは同じですが、触れさせ方が異なるため役割が分かれます。この検証でも、洗浄にはオゾン水、保存中の菌の増殖を抑える目的にはオゾンガス、という形で使い分けられていました。オゾン水生成器オゾン発生器

洗浄とオゾンガス暴露は、どちらか一方でも効果はありますか?

この検証では、洗浄と保存中の作用はそれぞれ別の役割を担っていました。洗浄は保存前の付着菌を減らす働き、オゾンガス暴露は保存中の増殖を抑える働きです。4条件の比較では、オゾン水洗浄とオゾンガス暴露を組み合わせたときに、保存中の菌数の増加が最も抑えられる傾向が見られました。

オゾンで保存すると野菜の品質は落ちませんか?

この検証では、栄養成分は保存前後で目立った違いが認められませんでした。ポリフェノールやビタミンCは大きく変化せず、見た目の光沢が保たれた野菜もありました。一方、密閉容器内では水分が抜けやすい傾向があり、葉物などでは課題が残ります。保存方法によって向き不向きがあります。

家庭でもオゾン水生成器で野菜を洗えますか?

オゾン水生成器は気体のオゾンと異なり、水に溶かして使うため洗浄作業に使いやすい機器です。野菜の農薬除去などの用途で家庭でも使われており、飲食店などでの導入例もあります。機器には家庭用・業務用・兼用があり、生成できる水量などが異なるため、使用条件は製品仕様で確認してください。