解説漫画1

1. 農業でのオゾン利用の現状

農業分野でオゾンは、

土耕栽培での、オゾンガス暴露による栽培作物の生育促進や種子の発芽促進
土耕栽培での、オゾン水散水・噴霧による栽培作物の細菌感染防止や種子の消毒
水耕栽培での、培養液の殺菌や栽培システムの消毒
農産物食品の除菌・洗浄
などに広く使われています。

作物の栽培方法には、土耕栽培と水耕栽培の2種類の方法があります。土耕栽培は、屋外の露地やハウス内で土を使って栽培する方法で、水耕栽培は、ハウス内や屋内で、土を使わずに培養液(作物の生育に必要な栄養塩類が豊富な液体肥料、液肥ともいう)を使って栽培する方法です。

農業でのオゾンの利用には、栽培環境に合わせて、作物体をオゾンガスに暴露(一定の濃度のオゾンガスの充満した空間に置くこと)する場合と、オゾン水を作り、それを散水(作物の根の部分に水やりをする)、噴霧(作物の葉や茎に霧状の水を吹きかける)、あるいは培養液として用いる場合があります。

1.1. オゾン水とは

オゾン水とはどのようなものでどうやって作るのでしょうか?
オゾン水は、オゾンガスを封入した水で強い殺菌作用を持ちます。
オゾン水の製造には、オゾンガス発生器からオゾンガスを水中に吹き込んで作るのが一般的です。

オゾン水の利用目的は、オゾンガスと同様に、殺菌・除菌と脱臭です。
非常に広い範囲で利用されていて、シンクの水回り、風呂場、排水溝の殺菌・脱臭に使われるほか、医療現場では、器具の洗浄用や手洗いに汎用されて、院内感染防止に大きな役割を担っています。

2. 作物の感染症に対するオゾン殺菌

作物の感染症

作物の病気の原因となる細菌やカビの殺菌対策には、これまでは、次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤が使われてきました。ただ、このような殺菌剤の環境汚染に対する懸念も生まれています。オゾンガスやオゾン水を従来の殺菌剤の代わりに使えないものでしょうか?

この点を検討する前に、まず、作物の代表的な感染症を紹介します。

2.1. 作物の感染症

うどんこ病

うどんこ病にかかった葉

炭疽病

炭疽病にかかった果実

コレトトリクムというカビの一種による病気です。

果樹、草花、野菜などに灰色~黒っぽい斑点を生じ、感染が拡大すると作物の生育に影響します。

例えば、カキの実に黒い斑点が現れて、そこがえぐれ、腐っていくものです。

感染した葉、枝、実はすぐに取り除いて、農場から外に出して感染拡大を防ぎます。

根腐れ病

根腐れ病にかかった植物の根

青枯れ病

青枯れ病の様子

トマト、ナス、ジャガイモ、イチゴなど多くの野菜の感染症で、土壌中にいるラルストニアという細菌が病原菌です。

感染した作物は、萎縮して枯れる特徴があります。畑全体に広がって作物が全滅することもありますが、有効な薬剤がない厄介な病気です。

2.2. 作物の感染症に使われる殺菌剤

これらの作物の感染症に対して、良く使われるいくつかの薬剤を紹介します。

次亜塩素酸ナトリウム

電解次亜塩素酸水(電解水)

ケミクロンG

チアベンダゾール(TBZ)

TBZは、ヘテロサイクリック系の殺菌剤で、食品添加剤、農薬、動物用医薬品として使われています。かんきつ類やバナナの防カビ目的で使用されていますが、果皮だけでなく果肉からも薬剤の残存が発見されています。その結果、胎児に奇形が生じるとの実験結果もあり、その危険性が指摘されている殺菌剤です。
以上のように、作物や野菜の殺菌用に使われている有機殺菌剤は、いずれも、安全性に大きな問題を抱えています。

2.3. 作物の感染症原因菌のオゾンによる殺菌

これに対して、オゾンを使った殺菌法の効果はどうなのでしょうか?いくつかの事例を示し、そのメリットとデメリットを紹介します。

水耕栽培作物のオゾン殺菌

2.4. 種子の発芽に対するオゾンの作用

オゾンはさらに、作物の種子の発芽・成長にも好影響を与えます。

発芽床に置いたもやしの種子に、オゾンガスを暴露したところ、付着菌類の減少と茎の成長促進が認められたほか、SOD活性の上昇も確認。SODは抗酸化物質であり、これが増えるということは活性酸素が多く発生したことを意味しており、大量の酸素の発生が茎の成長につながったと考えられます*18。

また、ニンジンの種子を、0.1~2ppmの低濃度のオゾン水で1日の短時間処理した場合に、発芽率や初期生育に良い結果をもたらし、カイワレダイコン種子の生育促進をもたらしたとの報告もあります。

3. 作物の寄生虫へのオゾンの利用

畑とみみずの画像

作物に害を与える生物には、細菌やカビのほかにも、より大型の線虫や昆虫がいます。とくに、昆虫の中には、チョウやガの幼虫やアブラムシのように大きな害を与えるものがいます。

オゾンは細菌やウイルスの殺菌はできますが、このような大型の生物を殺すことはできません。その代わりに、例えば、アブラムシに対しては、アブラムシが分泌するフェロモン物質を分解して、集団生活を維持できなくさせます。もちろん、アブラムシが持っているウイルスの殺菌も可能です。

4. 食品分野でのオゾンの利用

カット野菜

食品分野でも、オゾンは、オゾンガスとしてもオゾン水としても色々な所で利用されています。まず、野菜や果物をオゾン水に漬けると、殺菌できる上に鮮度を保持できます。また、オゾンガスの噴霧により、作業所内や貯蔵庫内の浮遊細菌類の除去を行えます。
これと併せて、商品や作業所の脱臭効果もあります。

4.1. 野菜の前処理殺菌へのオゾン水の利用

時々話題になるO157による食中毒。その原因の一つが、生野菜やカット野菜の殺菌不足であるとされています。加熱していない野菜を食べる際には良く水洗いし、殺菌剤の使用も推奨されています。殺菌剤を使っても健康に問題は起きないのでしょうか?また、オゾン水は利用できないものでしょうか?

次亜塩素酸ナトリウムを使った食品の殺菌

次亜塩素酸ナトリウムは、カット野菜の殺菌剤として、現在、広く使われています。

その一方で、カットキャベツの品質保持目的に、次亜塩素酸ナトリウムを使うことの効果に疑問を呈する結果も。

すなわち、次亜塩素酸ナトリウムでカットキャベツに付着する細菌を99.9%以上減らすためには、有効塩素濃度を200ppm, pH4以下にする必要があり、この濃度ではキャベツが著しく変質することが明らかにされました。塩素濃度を200ppm以下にすると、無殺菌キャベツよりも、むしろ処理・冷蔵保存後に細菌が増えて、品質低下が起きることも分かりました。
(参考資料)

次亜塩素酸ナトリウムによるカットキャベツの殺菌と日持ちへの影響

オゾン水を使った食品の殺菌

4.2. オゾンによる野菜・果物の鮮度保持

まさに、オゾンは果物の鮮度保持にも一役買っています。

果物の熟成過程で発生するエチレンガスが、鮮度を落とすことが知られています。これに対して、脱臭と同じ仕組みでオゾンがエチレンガスを分解するため、イチゴ、ブドウ、キウイなどの果物や野菜の鮮度保持に役立ちます。

実際に、3~4mg/ℓの濃度のオゾン水で洗浄後の各種の野菜の鮮度保持期間を調べたデータがあります。

それによると、カット野菜、ネギ、ニラ、カリフラワー、ホウレンソウ、大根、白菜などが、オゾン未処理の野菜と比べて2日から10日以上長持ちすることが分かりました。

4.3. オゾン水による残留農薬の除去

今日、広範に使われている農薬は、農作物にも残留し、その危険性が問題視されています。この残留農薬の除去にオゾン水が有効というデータが。

有機リン系農薬を使って栽培された白菜をオゾン処理すると、50%のリンが除去されることや、メタミドホスやジメトエートというブロッコリー用の農薬の除去にも効果的でした。

オゾンは、空気中で酸素分子と酸素原子に分解されます。この酸素原子が農薬成分と結合して酸化・分解します。これは、正に、空気中の臭いの脱臭と同じ仕組みです。

(参考資料)
なぜオゾン水は農薬を分解するのか

5. 農業でのオゾン利用のメリットとデメリット

5. 農業でのオゾン利用のメリットとデメリット

以上のように、非常に多くの農業分野で活躍しているオゾンですが、最後に、そのメリットとデメリットをまとめてみます。

5.1. メリット

オゾン利用時のメリット

5.2. デメリット

オゾン利用時のデメリット

6. まとめ

産業革命以降の急激な産業の発展は、化石燃料の消費による大気中の二酸化炭素濃度の上昇とともに、フロンなどの増加を招いています。

それは、宇宙空間でのオゾン層の破壊につながり、さらにそれが、地球上への有害な紫外線の照射となって地球上の生物の体を蝕んでいます。

その一方で人類は、オゾンを人工的に作り出し、そのオゾンガスの力を有害な細菌類の撲滅に利用するという知恵も持ち合わせています。その一端を紹介してきました。

オゾンを破壊したり、製造したり。一体、人類とは利口なのでしょうか?それとも…

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