農業におけるオゾンの利用|場面別の使われ方と検討のポイント
異常気象や感染症の広がりは、作物の収量に大きく影響します。こうした中で、残留性の少ない殺菌・洗浄の方法のひとつとして、オゾンが注目される場面があります。
ただし、オゾンは農業のあらゆる場面に万能というわけではありません。使う場所や対象、ガスとして使うのか水として使うのかによって、向き不向きや確認すべき条件が変わります。
この記事では、農業でオゾンが使われている主な場面と、研究で報告されている利用例を、できるだけ条件とあわせて整理します。そのうえで、自分の栽培や現場で検討するときに確認したいポイントを示します。
農業でオゾンが使われている主な場面

農業分野でのオゾン利用は、大きく次のような場面に分けられます。
- 土耕栽培での、作物への散水・噴霧や、空間でのオゾンガス利用
- 水耕栽培での、培養液の殺菌や栽培システムの洗浄
- 種子の発芽・生育への利用
- 収穫後の農産物の洗浄・鮮度保持
いずれも「オゾン」とひとくくりにせず、ガスとして使うのか、水に溶かして使うのかを分けて考えると整理しやすくなります。
オゾンガスとオゾン水では使い方が変わる
オゾンには、気体(オゾンガス)として使う方法と、水に溶かした「オゾン水」として使う方法があります。
オゾンガスは、空間や貯蔵庫などの気中での利用に向きます。一方オゾン水は、作物への散水・噴霧、培養液、収穫物の洗浄など、液体として対象に触れさせたい場面で使われます。
オゾン水には、時間の経過とともに溶けたオゾンが空気中へ抜けて濃度が下がる性質があります。この点を補うため、微細な泡にオゾンを閉じ込めて空気中へ抜けにくくした「マイクロバブルオゾン水」も開発されています。報告例では、通常のオゾン水と比べて空気中へ約3倍抜けにくいとされています。
土耕・水耕・収穫後で利用目的が分かれる
同じ農業でも、土を使う土耕栽培、培養液を使う水耕栽培、そして収穫後の取り扱いでは、オゾンに期待する役割が異なります。
土耕や水耕では、病害の原因となる菌への対策や、生育への影響が検討されます。収穫後では、洗浄、鮮度保持、残留農薬の低減などが目的になります。次の章から、それぞれの報告例を見ていきます。
栽培中の病害対策としてのオゾン利用と報告例

作物の病害対策では、これまで次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤が使われてきました。残留性や環境への影響を抑えたいという背景から、その一部を補う方法としてオゾンの利用が研究されています。
ここで紹介する数値は、いずれも特定の試験条件下での報告です。濃度や接触時間、対象作物が変われば結果も変わるため、目安として読んでください。
土耕栽培での散水・噴霧に関する報告
土耕栽培のキュウリに、10mg/Lのオゾン水を散水して病害への影響を調べた研究があります。この報告では、オゾン水を処理した区画で、無処理の区画と比べてうどんこ病や炭疽病などの発生率が下がったとされています(KAKEN「農薬に依存しないマイクロバブルオゾン水利用による環境保全型農業の構築」より)。
水耕栽培の養液殺菌に関する報告
水耕栽培では、培養液を循環させて作物の根に供給します。この培養液の管理にオゾン水を使う研究が進められています。
- マイクロバブルオゾン水を5ppmの低濃度で処理したところ、トマトの青枯れ病菌の発病が抑えられ、生育障害も認められなかったとの報告があります。あわせて、チンゲンサイの生育促進やイチゴの収量増も確認されたとされています。
- カイワレダイコンの水耕栽培で、培養液に0.8mg/Lのオゾン水を使ったところ、茎の成長が未処理と比べて約1.4倍になったとの報告があります。これは、オゾン添加によって培養液中の溶存酸素が増えたことが一因と考えられています。
- 水耕ネギの培養液に、0.2ppmのオゾンを7日ごとに24時間、間欠的に注入すると、根腐れ病の原因菌の発生が抑えられたとされています(広島県の公開資料より)。
- トマトのロックウール栽培で、培養液をオゾン水生成器に通してオゾン水に変え、循環させるシステムを使ったところ、根腐れ病と青枯れ病に対して効果が示されたとの報告があります(NAROの成果情報より)。
培養液に使うオゾン水の条件についても検討されています。キュウリのフザリウム菌を対象にした研究では、初期濃度0.4mg/Lのやや濃いオゾン水をタンクに保存し、濃度が0.1mg/Lまで下がってから循環させると効果的だったと報告されています(J-STAGE「養液内病原菌のオゾンによる殺菌」より)。
種子の発芽・初期生育に関する報告
オゾンは、種子の発芽や初期生育に関しても研究されています。
ニンジンの種子を0.1〜2ppmの低濃度オゾン水で1日あたり短時間処理した場合に、発芽率や初期生育に良い結果が得られたとの報告があります(J-STAGE「オゾン暴露がニンジン種子の発芽と初期生育に及ぼす影響」より)。同様に、カイワレダイコンの種子でも生育促進が報告されています。
ただし、これらは低濃度・短時間という条件での結果です。濃度や時間が過剰になると作物への影響が出る可能性もあるため、条件を切り離して一般化はできません。
収穫後・食品分野でのオゾン利用

オゾンは、収穫後の農産物の取り扱いでも利用されています。ここでは洗浄、鮮度保持、残留農薬の低減の3つに分けて整理します。
収穫物・カット野菜の洗浄
収穫した野菜や果物、カット野菜の洗浄にオゾン水が使われています。報告例では、氷の中にオゾンを溶け込ませた「オゾン氷」でカット野菜を扱ったところ、付着していた一般細菌数が処理前と比べて1/100〜1/10000程度に減ったとされています。オゾン氷は、水に溶かしただけのオゾン水よりオゾンが抜けにくく、効果が持続しやすい点が特徴とされています。
鮮度保持への利用
果物の熟成を進めるエチレンガスを分解する働きから、鮮度保持にもオゾンが利用されます。3〜4mg/Lのオゾン水で洗浄した野菜の鮮度保持期間を調べた報告では、カット野菜、ネギ、ニラ、ホウレンソウなどが、無処理と比べて2日から10日以上長持ちしたとされています。
残留農薬の低減に関する報告
残留農薬の低減にオゾン水を使う研究もあります。有機リン系農薬を使って栽培した白菜をオゾン処理すると約50%のリンが除去された例や、ブロッコリー用農薬の除去に効果が見られた例が報告されています(解説資料「なぜオゾン水は農薬を分解するのか」より)。これは、オゾンが分解する過程で生じる酸素原子が農薬成分を酸化・分解する仕組みによると説明されています。
農業でオゾンを利用するメリットと運用上の注意点
ここまでの報告例を踏まえると、農業でオゾンを利用する際の主なメリットと注意点は次のように整理できます。優劣ではなく、向いている点と、あわせて考えておきたい点として読んでください。
メリットとして挙げられるのは、次のような点です。
- 使用後に残留しにくく、対象に成分が残りにくい
- 土耕にも水耕にも、対象や場面に応じて利用できる
- 条件によっては、農薬や殺菌剤の使用量を抑える方向で検討できる
- オゾン発生器を設置した後の運用コストを抑えやすい場合がある
一方で、運用上は次の点に注意が必要です。
- 効果は濃度・接触時間・対象によって変わり、一律ではない
- オゾン水は時間とともに濃度が下がるため、使い方の設計が必要になる
- 機器の導入には初期費用がかかる場合がある
- 培養液では、酸化によってマンガンや鉄などの成分が変化することがあり、補給を考える必要がある場合がある
これらは「オゾンだから良い・悪い」ではなく、自分の栽培方式や対象に合うかどうかで判断する材料になります。
オゾン機器のタイプと農業での使い分け
農業でオゾンを検討する際は、「オゾンかどうか」よりも「どのタイプの機器か」で考えると整理しやすくなります。
オゾン水を使いたい場合は、オゾン水生成器を使います。水に溶かしたオゾンで、作物への散水・噴霧、培養液、収穫物や野菜の洗浄、農薬除去などに利用されます。
空間や気中をオゾンガスで処理したい場合は、オゾン発生器を使います。貯蔵庫や作業所の浮遊菌対策や脱臭などが目的になります。この中には、人やペットがいない無人環境での使用を前提とする業務用の製品があります。一方で、有人環境での使用を想定した製品もあり、すべてのオゾン発生器が無人専用というわけではありません。
そのため、機器を選ぶときは次の点を分けて考えることが大切です。
- ガスで使うのか、オゾン水で使うのか
- 業務用で無人環境を前提とする機器か、有人環境でも使える機器か
- 使用後の換気や使用時間など、運用条件はどうか
使用条件は製品ごとに異なります。具体的な可否や使い方は、製品仕様や取扱説明書で確認することをおすすめします。
自分の栽培・現場でオゾンを検討するときに確認したいこと
最後に、農業でオゾンの導入を検討する際の確認ポイントを整理します。
まず、対象を整理します。栽培中なのか収穫後なのか、土耕なのか水耕なのか、対象は作物・培養液・収穫物のどれかを切り分けます。
次に、使い方を決めます。オゾンガスで空間を処理したいのか、オゾン水で対象に触れさせたいのかによって、選ぶ機器が変わります。
そのうえで、ここで紹介した研究例の数値は、いずれも特定の濃度・接触時間・対象での結果である点を踏まえます。自分の作物や設備にそのまま当てはまるとは限らないため、小規模での試験的な確認から始める方法もあります。
機器を選ぶ際は、タイプと使用環境(有人・無人、換気の手順)、運用負荷、製品仕様や導入実績、サポート体制も確認しておくと、導入後の判断がしやすくなります。
これらの条件を整理したうえで、自分の栽培方式や現場の運用に合うかを見極めることが、結果として失敗の少ない検討につながります。
よくある質問
農業でオゾンはどのように使われますか?
農業では、オゾンをガスと水の両方の形に分けて使い分けるのが基本です。オゾンガスは貯蔵庫や作業所など気中の処理に向き、オゾン水は作物への散水や噴霧、培養液の管理、収穫物の洗浄などに使われます。土耕・水耕・収穫後で目的が変わるため、どの場面の話かを分けて考えると整理しやすくなります。
オゾン水で農薬は落とせますか?
残留農薬の低減に効果があったとする研究報告はありますが、条件によって結果は変わります。例として、有機リン系農薬で栽培した白菜をオゾン処理すると約50%のリンが除去されたとの報告があります。対象や濃度、処理時間で結果は異なるため、すべての農薬や野菜に同じ効果があるとは言えません。オゾンバスター(オゾン水生成器)
水耕栽培の養液殺菌にオゾンは使えますか?
水耕栽培の養液管理にオゾン水を使う研究は複数あり、病害の抑制が報告されています。例えば低濃度オゾン水でトマトの青枯れ病の発病が抑えられた報告や、水耕ネギで根腐れ病の発生が抑えられた報告があります。いずれも特定の濃度と処理条件での結果のため、自分の設備では小規模での確認から始める方法が現実的です。
農業ではオゾン発生器とオゾン水生成器のどちらを選べばよいですか?
オゾン発生器は人がいる場所でも使えますか?
オゾン発生器を有人環境で使えるかは、製品のタイプによって異なります。業務用には無人環境での使用を前提とした製品があり、一方で有人環境での使用を想定した製品もあります。すべてが無人専用というわけではありません。使用後の換気や使用時間などの運用条件は、製品仕様で確認してください。よくある質問
