オゾンコラム

水産業におけるオゾンの利用|養殖の殺菌から関連施設までの使われ方と確認ポイント

水産業におけるオゾンの利用|養殖の殺菌から関連施設までの使われ方と確認ポイント

私たちが食べる魚の多くは、養殖魚です。養殖は天候に左右されにくく安定生産しやすい一方で、限られた生け簀の中で多くの魚介類を育てるため、感染症が広がりやすいという課題を抱えています。

飼育用水や排水の殺菌方法を見直すなかで、強い酸化作用を持つオゾンに関心が集まっています。この記事では、養殖での飼育用水の殺菌を中心に、真珠養殖や関連施設での使われ方、導入を検討するときに確認したい条件までを整理します。なお、ここで扱うのは主に業務用の大型システムでの利用です。家庭用機器など、ほかのオゾン機器全般の話とは前提が異なる点に注意してください。

養殖における感染症対策とオゾンの位置づけ

陸上養殖の生け簀と感染症対策のイメージ

陸上養殖で殺菌が重要になる理由

養殖には、海面に網で囲いを作る方法と、陸上の生け簀に海水や淡水を入れて育てる陸上養殖があります。陸上養殖は天候に左右されにくく、作業も管理しやすいという利点があります。

一方で、狭い生け簀で多くの魚を育てるため、細菌やウイルスが増えやすいという弱点もあります。一度感染が起きると、短時間で広がり、大量斃死につながることがあります。

そのため、魚卵、飼育用水、配管を含む施設全体の消毒・殺菌が行われています。なかでも重要とされるのが、飼育用水の殺菌です。

塩素・紫外線殺菌の課題と、オゾンが検討される背景

飼育用水の殺菌には、現在は塩素消毒や紫外線殺菌が主に使われています。ただし、それぞれに特性と課題があります。

塩素は、消毒副生成物や残留の管理が必要になります。紫外線は、水の濁りや対象によって届き方が変わる場合があります。

こうした背景から、別の特性を持つ酸化剤としてオゾンに関心が集まっています。オゾンは強い酸化作用を持ち、処理後は時間とともに酸素へ戻る性質があります。ただし後述のとおり、海水ではオキシダントの除去が前提になるため、「残らないから安心」と単純に考えることはできません。

魚病の原因菌・ウイルスに対するオゾンの作用

魚介類の殺菌をイメージした水槽

代表的な魚病と原因菌

まず、養殖でよく問題になる魚病と原因菌を整理します。

パスチュレラ菌感染症は、ブリ、タイ、ハタ、アジ類など多くの魚種で発生します。抗生物質が効く病気とされています。

ビブリオ病は、サケ・マス・アユなどで知られる病気です。飼育環境の悪化に伴って発生しやすいとされ、治療には抗生物質が使われます。

連鎖球菌症(エンテロコッカス菌など)は、養殖ブリで特に重要とされる細菌性の魚病です。カンパチ、タイ、アジ、ウナギなど、海水・淡水を問わず多くの魚種が感染します。このほか、淡水魚に多い病気として、せっそう病、冷水病、ウイルス性の壊死症などがあります。

原因菌・ウイルスへのオゾンの作用

オゾンの殺菌作用を調べた研究では、対象や条件によって必要な濃度と時間が大きく異なることが示されています。重要なのは、いずれも「特定の試験条件での結果」である点です。

ある学術研究では、水中オゾン濃度0.063mg/ℓで1分以内に、パスチュレラ菌とビブリオ病菌が不活性化したと報告されています。エンテロコッカス菌では0.111mg/ℓが目安でした。これより低い0.018〜0.028mg/ℓ以下では、ほとんど効果がみられなかったとされています(PubMed掲載の研究)。

別の試験報告(栃木県水産試験場 魚類感染症対策試験)では、必要な条件が次のように幅広く示されています。いずれも特定の試験条件での値です。

対象(魚病) オゾン濃度 処理時間
マスのせっそう病 0.04ppm 約30秒
ウナギの鮨赤病、ニジマスのレッドマス病 0.1ppm 約1分
ブリのビブリオ病 0.6ppm 約60分
クルマエビの真菌症 3ppm以下 約15分
コイのカラムナリス病 120ppm 約5分

同じ報告では、ビブリオ病菌、せっそう病菌、シュードモナス病菌、冷水病菌に対し、水中オゾン濃度2ppmで5分間の処理を行ったところ、いずれもこの条件下で殺菌が確認されたとされています。

ウイルスについても報告があります。ブリ膵肝壊死症ウイルスや伝染性造血器壊死性ウイルスなどに対し、0.5mg/ℓのオゾン濃度で15〜60秒以内に大きな不活化がみられたとされています。シマアジ神経壊死症ウイルスを対象にした比較では、次亜塩素酸ナトリウムが50mg/ℓで600秒を要したのに対し、オゾンは0.1mg/ℓで150秒で効果を示したという結果が報告されています。

効果は魚種や試験条件で大きく変わる

上の数値からわかるとおり、必要なオゾン濃度と接触時間は、対象とする菌やウイルス、魚種によって大きく異なります。つまり、「オゾンは魚病に効く」と一律にまとめることはできません。何を対象に、どの水質で、どの濃度・時間で処理するのかをセットで考える必要があります。

実際の導入例として、忍沢養殖場では平成9年(1997年)からオゾン殺菌システムを取り入れ、清潔な環境づくりに役立てていると報告されています。

養殖現場でのオゾンの使い方

反応タンク+活性炭ろ過の2段階方式

養殖用水へのオゾン利用では、いくつかの工夫がされています。代表的なのが、2段階に分ける方式です。

この方式では、オゾンを直接生け簀に吹き込むのではなく、まず反応タンク内で養殖用水と混ぜてオゾン水として作用させます。そのあと活性炭フィルターに通し、残ったオゾンや発生したオキシダントを吸着させて取り除き、きれいになった水を生け簀に戻します。

ヒラメ養殖での実例が、研究報告(オゾンによる魚類飼育用水の殺菌法:特に海水への応用)で紹介されています。飼育用海水を1.0mg/ℓで約8.5分処理し、活性炭で残留オキシダントを除去したところ、海水中の細菌数が処理前の1万分の1程度まで減ったとされています。この処理海水で育てたヒラメ稚魚は、未処理海水で育てた個体より体長・体重が上回ったという結果も報告されています。

マイクロバブルを利用する方法

オゾンを水に溶かしただけのオゾン水は、オゾンが抜けやすく、高い濃度を長く保ちにくいという性質があります。そこで、ナノ・マイクロバブル発生装置と組み合わせ、細かい泡として水中にとどまらせる方法が使われています。

養殖ヒラメで行われた試験(宮崎県水産試験場 オゾン微細気泡を用いた防疫対策技術の開発)では、エドワジエラ症に対し、感染個体をオゾン濃度0.15mg/ℓで60分間暴露したところ菌が確認できなくなり、0.11mg/ℓでも菌数が1/10程度まで減ったとされています。

熊本県のフグ養殖場では、海洋生け簀の底に細かい穴のあるパイプを設け、圧縮空気と混合したオゾンを送り込んで水を循環させる仕組みが使われています。赤潮の発生時にも斃死が起きず、夏場の高水温でも病原菌の繁殖が抑えられ、生存率や生産性の向上に役立っているとされています。

飼育排水の殺菌

養殖施設では、飼育用水だけでなく、飼育排水の殺菌も課題になります。目的は、病原体の拡散防止と、環境への配慮の2つです。

飼育期間中は、餌や糞などの有機物、腸内細菌が増え、水は少しずつ汚れていきます。この水をそのまま流すことへの懸念から、排水対策が重視されるようになっています。網走市水産科学センターや、島根県・三重県の栽培漁業センターでオゾンによる排水殺菌が試みられ、飼育排水中の細菌の大部分(報告では99.99%)を除去できたとされています(種苗生産施設における用水及び排水の殺菌)。

オキシダント除去という前提

オゾンを養殖に使ううえで、特に海水で重要になるのがオキシダントの除去です。海水中ではオゾンが多くの微量成分と反応し、有害なオキシダントに変わって長く残ることがあります。

オキシダントは微量でも魚介類に影響を及ぼすため、処理後の除去・無害化は欠かせない作業とされています。「オゾンを使えば安心」ではなく、活性炭ろ過などで残留オゾンやオキシダントをどう除去するかまでをセットで設計する必要があります。

真珠養殖でのオゾンの利用

真珠養殖の作業風景

放卵促進への利用

真珠を作る母貝(アコヤガイ)は、核入れ作業の前に卵を吐き出させる「放卵」が必要です。以前は、貝にストレスを与えて放卵させる方法が使われていましたが、大量斃死につながる事故が相次ぎ、別の方法が模索されていました。

愛媛県水産試験場などでは、オゾン処理した海水を使って放卵を促す方法が試みられ、よい結果が得られたため、今日では広く使われるようになっています。この方法には、貝の衰弱を抑えやすく、放卵のタイミングを作業に合わせて調整しやすいという利点があるとされています。

濃度・暴露時間で結果が変わる点

一方で、貝をオゾン水にさらす時間や濃度の管理は重要です。研究報告(アコヤガイの鰓換水に及ぼすオゾン処理海水の影響)では、残留オゾン濃度が0.42mg/ℓの場合は23日以内に回復したものの、0.58〜0.7mg/ℓでは回復に最長80日かかり、2割の個体が死亡したとされています。

この結果から、過度の浸漬は避け、残留オゾン濃度を抑えることが望ましいと整理されています。真珠養殖でのオゾン利用も、「使えば効果が出る」ではなく、濃度と時間をどう管理するかが結果を左右します。

水産養殖の関連施設のイメージ

飼育器具・水槽の消毒

オゾンは、飼育器具や水槽の消毒にも使われています。研究報告では、網、ホース、バケツ、長靴などの器具を0.5mg/ℓのオゾン処理海水で30分間処理したところ、高い殺菌率(報告では99.9%)が得られたとされています。器具を介した感染拡大を抑えるうえで、こうした消毒も対策のひとつになります。

鮮度保持・輸送での利用

オゾンは、魚介類の輸送時の鮮度保持にも応用が試みられています。マイクロバブルオゾン水を凍らせた氷の中ではオゾンが比較的長く残る性質を生かし、水産物を漬けて輸送する技術が開発されています。実際に、カツオ釣り漁船でイワシの生き餌を長時間保つ目的でオゾンが使われている例もあります。

水族館など室内施設での利用と、有人環境での注意

水族館でも、水槽の水質管理にオゾンが使われています。和歌山県のアドベンチャーワールドでは、ろ過した海水にオゾンガスを吹き込み、飼育生物の排泄物などの有機物を分解して、水の透明度を高めることに役立てているとされています。

水族館のイルカショーの様子

ここで注意したいのが、室内施設での扱いです。水中で使うオゾンと違い、空間にオゾンガスが漏れる場面では、人がいる環境での濃度管理が重要になります。

オゾン機器は一括りにできません。無人環境での使用を前提とする業務用機器もあれば、有人環境での使用を想定・許容する機器もあります。室内施設で使う場合は、機器の仕様と使用条件、換気の手順を製品仕様ベースで確認する姿勢が欠かせません。

水産業でオゾンを利用するメリットと注意点

魚の養殖場のイメージ

ここまでの内容を踏まえ、利用するうえでのメリットと注意点を整理します。優劣を断定するものではなく、特性として理解するための整理です。

期待できるメリット(条件付き)

  • 酸化作用が強く、条件を整えれば多くの細菌・ウイルスの低減が報告されている
  • 生体、飼育器具、水槽、配管、排水まで、幅広い対象に使われている
  • 殺菌だけでなく、有機物の分解による透明度向上や脱臭が期待される場面がある
  • 薬剤を継続購入する方式とは、運用やコストの考え方が異なる
  • 適切に残留オゾン・オキシダントを除去すれば、薬剤のように成分が長く残りにくいとされる

これらは、対象・濃度・時間・水質などの条件が整った場合の話です。条件を外れれば、同じ効果が出るとは限りません。

導入前に注意したい点

  • 生け簀規模に見合うオゾン量を得るには大型機器が必要になり、導入コストがかかりやすい
  • 魚種、菌の種類、水槽サイズ、海水か淡水かによって効果が変わるため、条件設定が必要
  • 海水ではオキシダントが残りやすく、除去・無害化の工程が前提になる
  • 室内施設で使う場合は、有人環境での濃度管理や換気に注意が必要
  • オゾン水はオゾンが抜けやすく、濃度を高く保ちにくい場面がある

水産業でオゾンを検討するときに確認したいこと

最後に、自社の養殖や施設でオゾンの利用を検討する場合に、確認しておきたい観点を整理します。

まず、対象を明確にします。何の魚種を、どの病原菌・ウイルスを想定して、どの工程で使うのかを切り分けます。次に、海水か淡水か、水量はどのくらいか、海水であればオキシダント除去をどう組み込むかを検討します。そのうえで、次の観点を確認します。

  • 対象とする魚種・病原体と、それに見合う濃度・接触時間の目安
  • 海水か淡水か、必要なオキシダント除去の工程
  • 飼育用水・排水・器具など、どの工程に使うか
  • 室内で使う場合の有人環境の有無、換気手順、濃度管理
  • 機器の出力、サイズ、導入・運用コスト、メンテナンス
  • 製品仕様、使用条件、サポート体制

これらは、対象や現場によって前提が変わります。研究報告で示された数値は、あくまで特定条件での結果です。自社の水質や規模で同じ結果が得られるとは限らないため、製品仕様やメーカー、必要に応じて試験データを確認したうえで、自社の運用に合うかを見極めることが、結果として失敗の少ない判断につながります。

よくある質問

水産業でオゾンはどのように使われていますか?

主に養殖の飼育用水や排水の殺菌に使われ、関連施設でも利用されています。生け簀での感染症の広がりを抑える目的で、飼育用水のオゾン処理が重視されてきました。このほか、真珠養殖の放卵促進、飼育器具や水槽の消毒、水族館の水質管理などにも利用例があります。オゾン水生成器一覧

オゾンはどんな魚病の菌やウイルスに効果がありますか?

多くの細菌・ウイルスで低減の報告がありますが、必要な濃度と時間は対象で大きく変わります。ある試験報告では、マスのせっそう病は0.04ppmで約30秒、ブリのビブリオ病は0.6ppmで約60分が目安とされました。いずれも特定の試験条件での結果で、現場の水質や規模が異なれば同じ結果になるとは限りません。

海水でオゾンを使うとき、特に注意することは何ですか?

海水ではオキシダントが残りやすく、処理後の除去・無害化が前提になります。海水中のオゾンは微量成分と反応し、有害なオキシダントに変わって長く残ることがあります。微量でも魚介類に影響するため、活性炭ろ過などで残留オゾンやオキシダントを除く工程をあわせて設計することが大切です。オゾンバスターインダストリー

養殖でオゾンを使うには、どんな機器が必要ですか?

規模に見合うオゾン量を出せる機器が必要で、水量や水質に応じた選定が前提です。生け簀の容量が大きいほど出力の高い機器が求められます。海水か淡水か、どの工程で使うかによっても適した構成は変わります。まずは対象と条件を整理し、製品仕様を確認したうえで選ぶことが大切です。オゾンバスターPRO

導入前に確認したいことや、試す方法はありますか?

対象・水質・運用条件の確認が重要で、レンタルで試す方法もあります。想定する魚種や病原体、海水か淡水か、必要なオキシダント除去、室内で使う場合の換気や濃度管理などを整理します。いきなり大型機を導入する前に、レンタルで使用感や運用負荷を確かめる進め方もあります。オゾン発生器のレンタル