オゾンコラム

オゾンによる新型コロナウイルスの空間除染|実証研究でわかった効果と正しい使い方の前提

オゾンによる新型コロナウイルスの空間除染|実証研究でわかった効果と正しい使い方の前提

新型コロナウイルスへの対策として、空間のウイルスや菌をどう減らすかは、医療・介護・宿泊などの施設で今も継続して検討されるテーマです。感染症法上の分類が5類に移行したあとも、施設の衛生管理として空間処理のニーズは残っています。

そうした中で注目されてきたのが、オゾンを使った空間除染です。ただ、オゾンには「強力そう」という印象と「危険そう」という印象の両方があり、結局どこまで効果があり、どう使えば安全なのかは分かりにくいのが実情です。

この記事では、オゾンが新型コロナウイルスを不活化する仕組み、奈良県立医科大学による実証研究の内容、空間除染としての正しい進め方と安全性の前提を順に整理します。「自施設で検討する価値があるか」を、条件に当てはめて判断できる状態を目指す内容です。

オゾンによる新型コロナウイルス対策が注目される背景と「空間処理」という考え方

オゾンの話に入る前に、なぜ「空間を処理する」という発想が必要とされたのかを整理します。ここが分かると、オゾンが向くのはどんな場面かが見えてきます。

飛沫感染・接触感染と、物品表面・空間への対策という視点

新型コロナウイルスの感染は、飛沫感染と接触感染が中心とされています。接触感染は、ウイルスが付着した物の表面に触れた手で、口や鼻を触ることで起こります。

このため、人の手指の消毒に加えて、人が触れる物の表面や、空間そのものの衛生をどう保つかが課題になりました。とくに不特定多数が出入りする施設では、対象となる面積や物品の種類が多く、拭き取りだけでは手間も時間もかかります。そこで、空間全体に行き渡らせて処理する方法が検討されるようになりました。

消毒液の空間噴霧が推奨されなかった経緯

一時期、消毒液を噴霧器で空間に散布する対策が広がりました。しかし厚生労働省は、消毒液を空間に噴霧して空気中のウイルスを除去する効果は確認されていないとして、これを推奨しないとしました。

そもそも空気中に出たウイルスは、すぐに落下して物の表面に付着しやすい性質があります。液体を噴霧しても、すべての物品の表面に行き渡ってウイルスと反応するとは限りません。つまり空間処理には、すみずみまで届く性質が求められます。気体であるオゾンが検討されてきたのは、この「届きやすさ」が理由の一つです。

オゾンが新型コロナウイルスを不活化する仕組み

オゾンがウイルスにどう作用するのかを、過信しない範囲で整理します。

オゾンの酸化作用と、エンベロープを持つウイルスへの作用

オゾン(O3)は不安定な気体で、強い酸化作用を持ちます。新型コロナウイルスは、外側を脂質の膜(エンベロープ)で覆われたタイプのウイルスです。

オゾンはこの脂質の膜を酸化して傷つけると考えられています。膜が壊れると、内部の遺伝情報が保たれにくくなり、ウイルスが増殖する力を失う(不活化する)方向に働くとされています。気体であるため空間に広がりやすく、手の届きにくい場所にも作用しやすい点が、ほかの方法にはない特徴です。

「不活化」の意味と、過信しないための前提

ここで用語を整理しておきます。ウイルスに対しては「殺菌」ではなく「不活化」、つまり感染する力を失わせるという言い方をします。

また、オゾンは作用したあと比較的短時間で酸素に戻るため、薬剤のような残留が起きにくいとされます。これは利点ですが、「ずっと効き続ける」という意味ではありません。効果は、濃度・接触時間・対象・環境といった条件によって変わります。「オゾンを置けば常に安心」と一般化せず、条件とセットで考えることが前提になります。

奈良県立医科大学の実証研究でわかったこと

オゾンの新型コロナウイルスへの効果については、当初は確認されたデータがありませんでした。その状況を変えたのが、次の実証研究です。本記事で最も重要な部分です。

研究の設計と条件

2020年5月、奈良県立医科大学などの研究グループが、オゾンの新型コロナウイルスに対する不活化効果を実証したと報告しました。微生物感染症学の矢野寿一教授、感染症センターの笠原敬センター長らによるものです。

研究では、安全キャビネット内に置いた耐オゾン性の密閉ボックスを使い、その中のステンレスプレート上に、培養した新型コロナウイルスを塗布してサンプルとしました。ボックス内のオゾン濃度は1.0〜6.0ppmの範囲で制御されています。曝露量は、濃度と接触時間をかけ合わせたCT値という指標で設定されました。

CT値ごとの不活化の結果

報告された結果は、設定した条件ごとに次のとおりです。いずれも、密閉ボックス内という試験条件での値です。

条件(試験室・密閉ボックス内) 新型コロナウイルスの不活化の程度
CT値60(オゾン濃度1ppmで60分曝露) およそ10分の1〜100分の1
CT値330(オゾン濃度6ppmで55分曝露) およそ1000分の1〜1万分の1

CT値60は救急隊のオゾン除染で参照される運用値、CT値330は医療機器認証の実証実験で用いられる値をもとに設定されたものです。濃度を高め、接触時間を確保するほど、不活化の程度が大きくなる傾向が読み取れます。

この結果をどう読むか

この研究は、密閉ボックス内でウイルスを直接オゾンに曝露した試験です。実際の部屋では、空間の広さ、物の配置、密閉の度合い、温度や湿度などの条件が変わります。

読み取れるのは「適切な濃度と時間の条件を満たせば、オゾンに新型コロナウイルスを不活化する働きがある」という点です。試験室での結果を、そのまま「どんな部屋でも同じ効果が出る」と一般化することはできません。実環境では、この条件をどう作るかが課題になります。

オゾンによる空間除染の進め方と、安全性の前提

効果を活かすには、条件を満たす使い方と、人への影響を避ける管理が両立している必要があります。オゾンは扱い方しだいで人体にも影響するため、ここを分けて考えることが大切です。

無人環境で行う基本手順

施設で高濃度のオゾンを使って空間全体を処理する場合は、無人環境で行うのが基本です。一般的な流れは次のように整理できます。

  • 対象の部屋を外部と遮断し、できるだけ密閉する
  • 機器が示す条件に沿って、決められた時間オゾンを発生させる
  • 処理中は人やペットを室内に入れない
  • 運転停止後も一定時間そのまま置き、その後に換気を行ってオゾンを室外へ逃がす

処理中だけでなく、停止直後はまだオゾンが残っているため、すぐに入室しないことがポイントです。

濃度・時間・空間容積の関係

どの程度の濃度に到達するかは、機器の発生量と部屋の広さ、運転時間の関係で決まります。たとえば業務用のオゾン発生器であるオゾンクラスター1400の製品仕様をもとにすると、おおよそ60平方メートル・天井高2.5メートルの空間で、運転と放置を組み合わせて先の研究と近い濃度域に到達させる、といった目安が示されています。

ただし、これは特定の条件での試算です。実際の到達濃度は、部屋の容積、密閉度、機器の状態などで変わります。具体的な運転時間や対象空間の目安は、製品仕様や取扱説明書で確認することが前提になります。

許容濃度と、有人・無人・機器タイプの切り分け

人への影響を考えるうえで、目安となる基準があります。日本産業衛生学会は、1日8時間・週40時間程度の労働環境におけるオゾンの許容濃度として0.1ppmを勧告しています。実証研究で使われた1〜6ppmは、これより高い濃度です。

ここで誤解しやすいのが、「オゾン機器はすべて無人専用」という一般化です。実際には機器のタイプによって前提が異なります。

  • 高濃度で空間全体を処理する用途は、無人環境での使用を前提とする業務用機器が中心です。新型コロナウイルスの空間除染で想定されるのは、主にこのタイプです。
  • 一方で、モード切替によって有人環境でも使える設計の機器や、家庭用として設計された機器もあります。これらをすべて「無人専用」とひとくくりにはできません。

安全性は「安全か危険か」の二択ではなく、濃度・換気・有人と無人の切り分け・機器タイプという条件の組み合わせで考えるものです。無人前提の業務用機器を有人環境で使えるかのように扱わないこと、逆に有人対応の機器まで一律に無人専用とみなさないこと、その両方に注意する必要があります。正確な使用条件は、製品仕様で確認することが前提です。

オゾンによる空間除染が活用されている場面

車両など空間のオゾン除染の様子

条件が整いやすい現場では、オゾンによる空間処理が実際に取り入れられてきました。代表的な場面を紹介します。

医療・介護施設での活用

診療や面会が終わったあとの無人時間を使い、待合室や廊下などをオゾンで処理する運用が見られます。送風機を併用して空間全体に行き渡らせる工夫をしている施設もあります。

医療・介護の現場では、化学薬剤を使ったあとの残留が課題になりやすい一方、オゾンは作用後に酸素へ戻り残留が起きにくいとされるため、この性質が評価される場面があります。導入施設からは、感染対策をしているという「安心感」につながったという声も聞かれます。

宿泊施設・車両など、無人時間を作りやすい場面

ホテルや旅館の客室は、チェックアウトから次のチェックインまでの無人時間を作りやすく、空間処理との相性が出やすい場面です。客室では、宿泊者が触れた箇所を清掃したうえで、密閉した室内をオゾンで処理し、その後に換気するという流れが取られます。

このほか、新型コロナウイルス発生初期に船内の処理で用いられた例や、救急車両への除染機器の搭載など、無人時間と密閉空間を確保しやすい現場での活用が広がってきました。共通しているのは、「人がいない時間を作れる」ことが導入のしやすさにつながっている点です。

オゾンを空間のウイルス対策に検討するときの確認ポイント

最後に、自施設で検討する際に確認しておきたい観点を整理します。オゾンは万能ではありませんが、条件が合えば空間処理の有力な選択肢の一つになります。

  • 処理したい空間で、人やペットがいない無人時間を確保できるか
  • 部屋を密閉でき、必要な濃度と時間の条件を作れる広さ・構造か
  • 使用後の換気手順と、入室までの待機時間を運用に組み込めるか
  • 検討している機器が、無人前提の業務用か、有人対応のモードを持つかなど、製品タイプと使用条件
  • 対象空間の素材や設備とオゾンの相性、運転時間の目安(製品仕様で確認)
  • スタッフへの運用手順の共有と、濃度管理の方法

これらは製品ごとに前提が異なります。試験室での効果がそのまま現場で再現されるわけではないことを踏まえ、製品仕様やメーカーの説明を確認したうえで、自施設の運用に合うかを見極める姿勢が、結果として失敗の少ない判断につながります。

よくある質問

オゾンは新型コロナウイルスに効果があるのですか?

一定の濃度と時間の条件下で、新型コロナウイルスを不活化する働きが報告されています。奈良県立医科大学などの研究では、密閉容器内でオゾンに曝露するとウイルスが大きく減少することが実証されました。ただし試験室での結果であり、実際の空間で同じ効果が出るとは限らないため、濃度や時間の条件を満たす使い方が前提になります。

オゾンによる空間除染には、どのくらいの濃度と時間が必要ですか?

濃度と接触時間をかけ合わせたCT値という指標で考え、条件によって不活化の程度が変わります。研究では、オゾン濃度1ppmで60分の条件でおよそ10〜100分の1に、6ppmで55分の条件では1000〜1万分の1まで減少しました。実際の到達濃度は部屋の広さや密閉度で変わるため、機器の製品仕様で目安を確認することが大切です。

オゾンによる空間除染は安全ですか?

安全か危険かの二択ではなく、濃度・換気・有人と無人の管理がそろっているかで考えます。高濃度で空間全体を処理する場合は無人環境で行い、処理後は一定時間あけてから換気します。日本産業衛生学会は労働環境での許容濃度を0.1ppmと勧告しており、人がいる状態での高濃度処理は避けることが前提になります。

オゾン発生器は人がいる部屋でも使えますか?

機器のタイプによって異なり、すべてが無人専用というわけではありません。新型コロナの空間除染で使う高濃度処理は、無人環境を前提とする業務用機器が中心です。一方で、モード切替で有人環境にも対応する機器や、家庭用として設計された機器もあります。使用条件は製品仕様で確認することが前提です。オゾン発生器一覧

新型コロナ対策でオゾンによる空間除染を導入するなら、どんな施設に向いていますか?

人のいない時間と密閉できる空間を作りやすい施設で、検討しやすい方法です。医療・介護施設の診療後や、ホテル客室のチェックアウト後など、無人時間を確保しやすい現場での活用例があります。対象空間の広さや換気手順、運用体制を踏まえ、自施設に合うかを見極めることが大切です。オゾンクラスター1400