オゾンの殺菌メカニズムとは?オゾンの基本から除去方法まで解説!
オゾンと聞けば、オゾン層を連想する人も少なくないでしょう。
オゾン層は、太陽が放つ有害な紫外線を吸収して地球上の生物を守っている不可欠なものです。
オゾンにはもう一つ、殺菌や消毒の役割があります。
この記事では、オゾンが果たしている、殺菌や消毒効果のメカニズムについて解説します。オゾン発生器導入の参考にしてください。
オゾンの基礎知識
オゾンの殺菌メカニズムを知るためには、オゾンの基礎知識を得ることが重要です。
オゾンの基本的な情報を知ればオゾンの有効利用に役立ちます。ここでは、オゾンの基礎知識について解説します。
オゾンとは
オゾン(O₃)は自然の空気中に存在する気体で、語源はギリシャ語のOzein(臭うという意味)からきています。
名前のとおりオゾンには青臭い、特有の刺激臭があり、その存在は紀元前から知られていました。自然界におけるオゾンは、大部分が地球のオゾン層に紫外線が到達する際に化学反応によって作られます。
ほかには雷やオーロラが放電する際にもオゾンを生成しますが、量としてはわずかです。こうして作られるオゾンは、地表近くの自然環境下にも存在します。オゾン層が位置するのは、地上から約30Km上空の成層圏です。オゾン層には濃度10~20ppmのオゾンが地球の周りを囲むように存在し、地表に紫外線が到達することを防いでいます。
実際にオゾン層で吸収される紫外線は全体の約95%で、地上へ届く紫外線は、残りの約5%です。紫外線のなかには殺菌線と呼ばれる、非常に強い殺菌力をもつ波長の電磁波が含まれています。
この電磁波に触れるとDNAが光化学反応を引き起こすため非常に有害です。したがって地球にオゾン層がなければ生物の存続は難しいといえます。
オゾンは身近に発生している
オゾンは、身近な自然のなかでも微量ながら常に発生している気体です。
オゾンの生成には紫外線が関わるため紫外線の強い場所では発生しやすく、記録によれば日中の海岸、反照の強い場所では0.1ppm~0.3ppmのオゾンが測定されています。
また、成層圏では、地球の大気が紫外線の影響をより強く受けることができます。大気中の酸素分子(O₂)は紫外線によって酸素原子(O)2つに光分解され、それぞれが別の酸素分子(O₂)と結合することによってオゾン(O)が生成されるメカニズムです。
一方、対流圏では、大気酸化反応によってCOやメタンなどの反応性有機物がO原子と結びつき酸化する関係で、オゾンが生成されます。
通常、私たちが生活している大気中に存在するオゾンは0.005ppm程度で、大気の自浄作用を担っています。大型コピー機などからも、コロナ放電によって微量のオゾンが発生するなど、オゾンは元々、身近にある気体なのです。
大気中でのオゾン生成プロセス|環境儀 No.68|国立環境研究所
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
オゾンは、酸素原子が3個結合した不安定な分子(O3)で、独特の臭気が特徴的な常温では無色の気体です。オゾンの酸化還元電位はフッ素の次で、過酸化水素水、二酸化塩素、酸素などよりも強く、反応条件によっては有機化合物がCO2にまで酸化分解されます。高い酸化力を活かして、オゾンは水や空気の殺菌に利用され、繊維、ワックス、でんぷんなどの酸化反応にも使用されています。室温ではオゾンの比較的短命で、容易には貯蔵できないため、使用する場所においてオンサイトで製造します。
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
オゾンは、酸素原子が3個結合した不安定な分子(O3)で、独特の臭気が特徴的な常温では無色の気体です。オゾンの酸化還元電位はフッ素の次で、過酸化水素水、二酸化塩素、酸素などよりも強く、反応条件によっては有機化合物がCO2にまで酸化分解されます。高い酸化力を活かして、オゾンは水や空気の殺菌に利用され、繊維、ワックス、でんぷんなどの酸化反応にも使用されています。室温ではオゾンの比較的短命で、容易には貯蔵できないため、使用する場所においてオンサイトで製造します。
オゾンの発生方法
オゾンは自然のなかでもさまざまな方法で発生しているものです。
このメカニズムを利用し、人工的にオゾンを発生させる方法もあります。
ここでは、オゾンを発生させる方法について解説します。
【オゾン発生方法1】光化学反応法
光化学反応法によるオゾン発生は、オゾン層でオゾンが生成されるときと同じメカニズムです。
波長の短い紫外線であるオゾン発生線を酸素分子(O₂)に照射すると、酸素分子は酸素原子(O)2個に光分解されます。
こうしてできた酸素原子は、電子のはたらきによって他の酸素分子と結合するため、オゾン(O₃)が生成されるのです。
この方法では紫外線のなかにオゾンを分解する波長も含まれているために、生成と同時にオゾンを分解する作用がはたらきます。
したがって、高濃度のオゾンを発生させることはできません。
【オゾン発生方法2】電解法
電解法は電気分解を利用した方法です。電解液には硫酸もしくは塩酸の水溶液を使います。
現在では、固体電解質を使用してオゾンを発生させる方法があるほか、電解液として四フッ化ホウ酸を使う方法研究が進められています。
ただし、電解法でオゾンを発生させるためには大きな電源装置が必要になるため、普及はしていません。
【オゾン発生方法3】放射線照射法
放射線照射法によるオゾンの発生は、放射線の電離作用を利用した方法です。
放射線の高エネルギー領域内では空気が化学反応を起こし、オゾンが発生します。
これを応用してオゾンを発生させる方法が放射線照射法ですが、現状ではまだ研究が進められている段階で、オゾン発生装置として実用化の目処はたっていません。
【オゾン発生方法4】放電によるオゾン発生
放電によってオゾンを発生させる方法もあります。一般的に使われるのは、無声放電方式とコロナ放電方式、2種類の方法です。
しかし、ほかの放電方式や、複数の方式を組み合わせた複合放電方式によってオゾンを発生させる方法もあります。
現在、オゾン発生器においては放電による方法が最もよく使われています
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
オゾン形成は、主に電子の関与した反応によるため、オゾン発生器に注入されたエネルギーのうち、どれだけ効率よく電子にエネルギーが配分されたかが重要となります。酸素ガス中では、電子の持つエネルギーのかなりの部分が酸素分子の解離に使われるのに対して、空気原料中ではほぼガスの分圧に応じて電子エネルギーが酸素および窒素両ガスに分配されます。このため、窒素分子の振動励起に多くのエネルギーが消費されることになってしまい、オゾン生成効率を減少させる原因の一つとなっています。
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
オゾン形成は、主に電子の関与した反応によるため、オゾン発生器に注入されたエネルギーのうち、どれだけ効率よく電子にエネルギーが配分されたかが重要となります。酸素ガス中では、電子の持つエネルギーのかなりの部分が酸素分子の解離に使われるのに対して、空気原料中ではほぼガスの分圧に応じて電子エネルギーが酸素および窒素両ガスに分配されます。このため、窒素分子の振動励起に多くのエネルギーが消費されることになってしまい、オゾン生成効率を減少させる原因の一つとなっています。
オゾンの毒性について
オゾンを発生させるときは、毒性のある二次生成物が生じることはないため、安全性が高い気体です。
濃度が高ければ強い酸化力を持ちます。
高濃度のオゾンは反応性が高く、鼻やのどへの刺激を皮切りに人体へのさまざまな影響も考えられます。
毒性を発揮する濃度のオゾンは、特有のオゾン臭を強烈に放ちます。
したがって強いオゾン臭がしたときには、すぐに換気をおこない空気中のオゾン濃度を下げることが重要です。
また、換気がうまくいかずオゾンが残留してしまう場合は、分解させる必要があります。
[ 参考記事 ]
・オゾンの人体に対する影響について|オゾンは人体に有害なのか?
・消臭・除菌目的でオゾン発生器を使用する際のオゾン濃度の目安
オゾンの分解方法
毒性がある残存オゾンを分解させる方法は4つあります。
これらの方法は、オゾンを確実に処理する際に使用するものです。
また、オゾンの除菌メカニズムの理解にも役立つでしょう。それぞれの分解方法について解説します。
【オゾン分解方法1】活性炭吸着分解法
オゾンの活性炭吸着分解法は、活性炭にオゾンガスを吸着させる方法です。
オゾンは活性炭に吸着されて発熱反応を起こし、分解して二酸化炭素(CO₂)や、少量の一酸化炭素(CO)を発生させます。このとき残るのは酸素分子(O₂)のみです。活性炭吸着分解法はこのようにして、オゾンを確実に分解処理できます。
【オゾン分解方法2】加熱分解法
オゾン発生器は、先に説明した仕組みのとおり、分子レベルで臭いの根本から取り除けることが特徴です。
このため、空気中に漂っている臭いの原因だけでなく、部屋や物に染みついている臭いをなくしたい場合に効果を発揮します。
たとえば服に付いたタバコの臭いは、空気清浄機ではなかなか消せませんが、オゾン発生器なら効率的に取り除けます。
【オゾン分解方法3】接触分解法
オゾンが接触分解を起こす物質として、代表的なものにシリカ、アルミナ、酸化第二鉄があります。
オゾンは地表付近で自然分解する気体ですが、その理由はこれらの物質が土砂に含まれており地表付近でオゾンと反応するためと考えられるでしょう。
また、他の金属や金属酸化物の表面に触れても、分解して酸素に変化する性質を持ちます。
【オゾン分解方法4】湿式法
湿式法のうち水洗法と呼ばれる方法は、オゾンを水に溶かすと非常に不安定になり、わずか十数分でも半減する性質を利用しています。
水に溶けたオゾンは、温度上昇やPH値の上昇に伴って加速度的に酸素へ分解されるのです。
ただし、水が中性の場合、オゾンの溶ける速度は遅く、除去率が下がります。
一方、オゾンを急速に分解させるのは高濃度アルカリ水溶液で、これをアルカリ洗浄法と呼びます。
アルカリ水溶液としては5%程度の水酸化ナトリウムが適当です。
オゾンの物理的特徴と科学的特徴
オゾンは酸素(O₂)の同素体で、分子記号はO₃です。
オゾンの沸点は-112℃で融点は-193℃、臨界温度は-12℃です。比重は空気の1.54倍、酸素の3倍あります。
オゾン(O₂)を構成する3つの酸素原子(O)のうち、第三の酸素原子の結合は構造上ゆるいものとなっています。
容易に1原子の酸素(O)を放出してしまうのです。
このためオゾンは非常に不安定で、生成されても常温で徐々に分解し、構造が安定した酸素(O₂)に変化します。
通常の化学反応では、オゾンが毒性のある副次物を生成することはありません。
また、原料は空気または酸素であるため、どのような場所でも必要量を得られることがメリットです。
これらの特徴がオゾンの除菌メカニズムにつながっています。
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
酸素濃度が高いほうがオゾン発生効率が高いことは周知であるが、高純度領域では純度が高すぎることによる弊害が生じてしまいます。極めて純度が高い酸素のみを原料ガスとした場合、オゾン発生効率は極めて低く、高濃度オゾンの発生すら不可能となります。さらに、この特性は、運転時間とともに継続的な性能低下を生じ、最終的に出力されるオゾン濃度がゼロに近づいていきます。ところが、極めて純度が高い酸素に窒素を微量添加 (l.0%程度)した場合、オゾン発生特性が飛躍的に回復し、安定な高濃度オゾン発生が実現できます。
京都大学 東南アジア地域研究研究所
野瀬光弘 先生
酸素濃度が高いほうがオゾン発生効率が高いことは周知であるが、高純度領域では純度が高すぎることによる弊害が生じてしまいます。極めて純度が高い酸素のみを原料ガスとした場合、オゾン発生効率は極めて低く、高濃度オゾンの発生すら不可能となります。さらに、この特性は、運転時間とともに継続的な性能低下を生じ、最終的に出力されるオゾン濃度がゼロに近づいていきます。ところが、極めて純度が高い酸素に窒素を微量添加 (l.0%程度)した場合、オゾン発生特性が飛躍的に回復し、安定な高濃度オゾン発生が実現できます。
オゾンの殺菌・除菌メカニズムについて
不安定な気体であるオゾン(O₃)は、酸素 (O₂)と酸素原子 (O)に分解しやすい性質をもちます。
放出された酸素原子(O)は、安定した構造を得るため、ほかの物質と結合しようとします。
このとき細菌やウイルス、カビの胞子、臭いの原因物質などに結合すると、殺菌や除菌、消臭の効果を発揮できるのです。
酸素原子(O)と結びつくと細菌やウイルスに強酸化作用が起こり、細胞が破壊されて死滅につながります。臭いの原因物質も同じく、酸化によって他の物質に変化することで臭いがなくなります。
自然の状態では、大気中の酸素は約20%あるのに対し、オゾンは極めて少量しか存在しません。強酸化作用のあるオゾンは、自然界のなかで発生しても16時間程度で半減してしまいます。
しかし、こうして迅速に酸化する作用によって、オゾンによる殺菌や除菌、消臭のメカニズムが成り立っています。
まとめ
オゾンの酸素原子を他の物質と結びつけ酸化させることで、殺菌、除菌、消臭といった有用な効果を得ることができます。
オゾンは分解しても有害物質を発生させることがなく、高濃度になりすぎなければ毒性もありません。
近年、オゾン発生器が注目を浴びています。さまざまなウイルスの除去、消臭を目的として、健康的で気持ちの良い生活のために利用する人が増えているのです。
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