オゾンによるノロウイルスの不活性化
家庭内でノロウイルスの二次感染を、オゾン発生器を使ってどのように防ぐか、お伝えします。
また、最近のノロウイルス大量感染事例を見ながら、オゾンを使うことでどのような状況のノロウイルスの発生を防げるのかについて、後半でお伝えします。
ノロウイルスはきわめて強い感染症で、体力のない方は命を落とす可能性すらあります。
今回はノロウイルスについて、また、ノロウイルス対策にオゾンがどのように役に立つかご紹介いたします。
ノロウイルスとは
ノロウイルスは、極めて強い食中毒を引き起こすウイルスです。ウイルスが腸内で繁殖し、嘔吐、下痢、腹痛を引き起こします。
私の家族が二度ノロウイルスにかかっていますが、「下痢と嘔吐が絶え間なくおそってくるため、トイレから出られない。そして吐くものがなくなってもひたすら吐き気がする。地獄のようだ」と言っており、通常の食中毒よりかなり重い症状がでます。高齢で体力がない方は、これにより命を落とすこともあります。
なぜなら、ノロウイルスは抗ウイルスが存在せず、発症して1-2日はひたすら耐えなければならないためです。
ノロウイルスの発生が多いのは冬季です。特に12月から3月は例年発症者が1,000人を越えています。
逆に夏の発祥は少なく、毎月十数人、また数十人程度です。
感染ルートは、食べ物や手、指などからの感染で、魚介類、特に二枚貝に多いとされています。
私の家族の場合は、一度目は寿司屋でホタテなどの二枚貝を食べて発症、二度目は同じ寿司屋で貝類以外の刺身を食べて発症しています。どちらも冬でした。
二度目は、貝類に付着したウイルスがまな板に残り、同じまな板で調理した刺身にウイルスが移ったようです。
また、2006年に東京のホテルにて、ノロウイルスに感染した患者がホテルのカーペットで嘔吐し、カーペットを洗浄したのちもウイルスが残り、空気上に舞ったウイルスが手や指などに付着し、そこからノロウイルスに感染した例が話題になりました。
このホテルで感染したと報告されたノロウイルス発症者数はなんと347人です。
もしこれが皆様ご自身の家だったら、誰か一人が感染すると、二次災害で家族全員がノロウイルスになることもあり得ます。
オゾンによるノロウイルス除菌
それでは、オゾンを使ってどのようにノロウイルスの二次災害を防ぐか、ご紹介します。
もし家族がノロウイルスになってしまったら、まずはオゾン水を作って、ふきんなどにしみこませて、人の手が多く触れるところを丹念に拭き掃除しましょう。
ドアノブ、テーブル、椅子、手すり、床、シャワーの取っ手、流しのレバー、冷蔵庫などです。
これらは家族全員の手が触れるため、特に危険です。
感染した家族がノロウイルスから回復しても、菌がなくなるまで時間がかかるため、発症して3日から一週間はこれを繰り返し行いましょう。
また手が触れないもの、例えばカーテン、ドア、たんす、食器棚なども、時間が許す限り、オゾン水を染み込ませたふきん等でこまめに拭くことをおすすめします。
ノロウイルスにかかった家族の嘔吐や下痢が収まって、トイレから離れることができるようになったら、オゾン発生器でトイレの空気中のノロウイルスを不活性化します。
その後、オゾン水で便座や床、トイレットペーパー受けなどを拭き掃除しましょう。
先にトイレの空気中のノロウイルスを不活性化するのが重要です。先に拭き掃除をしてしまうと、掃除する人がノロウイルスに感染してしまう可能性があります。
また、ノロウイルスに感染した家族が床に嘔吐している場合も同様に、オゾン発生器で部屋の空気洗浄をしたのちに、床の拭き掃除をしましょう。
フローリング床だと掃除しやすいのですが、カーペットだとやや大変です。 この場合は、十分な量のオゾン水をカーペットに染み込ませ、その後乾燥させる、または別の乾いた布でふき取るのがよいでしょう。
ノロウイルスに感染した家族の寝室も同様に、オゾン発生器で空気を除菌、オゾン水をふきんにしみこませて、拭き掃除をしましょう。
ふとん、シーツ、まくらなど、長時間口元に接触する可能性があるものは、特に危険です。
食器を洗うときは、いったんオゾン水で除菌してから洗う方がよいでしょう。 食器乾燥機があれば、それとの併用はさらに効果を高めます。
ノロウイルスの最新発生事例を追う
このコラムを執筆している時点でまだ12月中旬で、これからノロウイルスが流行していきます。しかし既に複数のノロウイルス発生事故が起こっています。
いくつかカテゴリ分けしてお伝えします。
1. 保育施設
・2017年12月、佐賀県西部の杵藤地区にある認定こども園で、園児と職員あわせて26人がノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎にかかったと発表(こども園の名前は非開示)
・2017年11月、茨城県牛久市の保育園で、園児32人と職員2名が下痢などの症状を訴え、うち3人の便を調べたところノロウイルスが発見された。
・2017年11月、長野県豊野町の保育園で、園児13人と職員1人が腹痛や下痢などの症状を訴え、うち1名の園児が病院で感染性胃腸炎の診断。ノロウイルスが発見される。
2. レストラン
・2017年11月、修学旅行で上京していた静岡県の小学生と教員合わせて40人が、東京都墨田区のイタリアレストランでの食事が原因でノロウイルスに感染。レストランは6日間の営業停止に。
・2017年11月、栃木県芳賀町の飲食店で3歳から78歳までの49人がノロウイルスに罹患し下痢や発熱の症状。当該レストランは営業停止処分に。89人の団体が同じ弁当を食べた結果、うち49人が発症。
3. ホテル
・2017年6月、千葉県浦安市のホテルにて、結婚披露宴の参加者が下痢や嘔吐、発熱などの症状が発生。披露宴で提供された料理が食中毒の原因であることが判明し、調理を担当したホテル内厨房に3日間の営業停止処分。
・2017年10月、千葉県鴨川市の水族館付属のホテルで、ホテルの夕食(バイキング)を原因とするノロウイルスが発生し、58人が感染。ホテル厨房で調理されたポテトフライなどからノロウイルスが検出。
4. その他
・2017年11月で、3週間続けてノロウイルスを原因とする感染性胃腸炎が増加したことから、神奈川県は「ノロウイルス食中毒系警戒警報」を発令。既に10数名が罹患。施設詳細は非公開。
既に事故が起こっている「保育施設」「レストラン」「ホテル」は非常に事故が多い施設ですが、これ以外に想定される事故としては以下があります。
過去に起こった事故から引用してみたいと思います。
5. 介護・高齢者施設
・2016年12月に、熊本県熊本市内の特別養護老人ホーム内で、ノロウイルスの集団感染が発生し、43人が罹患したと発表。
・2016年3月に、東京都町田市の老人ホームでノロウイルスの集団感染が発生。給食を食べた40歳から102歳までの50人が、下痢や嘔吐を訴える。
・2015年2月に、東京都東大和市の高齢者施設で、調理場で作られた食事を食べた高齢者のうち16人が食中毒の症状を訴え、うち1名が死亡。食事からノロウイルスが検出された。
6. 学校
・2014年1月に、静岡県浜松市で市内の会社が製造した学校給食のパンにノロウイルスが混入していたことからノロウイルスの集団感染が発生。小学校15校が閉鎖され、6,700人が休校する事態に。
これらすべてに共通しているのは、「大人数に食事を提供する厨房、また機能がある施設」であることです。
もちろん、人から人への接触による感染もありますが、大規模な集団感染事故はほとんど、厨房が現場になっています。
よって、厨房がある施設を運営している責任者は、「厨房で働く人がノロウイルスを料理に混入させないために、どのような施策があるか」を徹底的に考えて対処する必要があります。
もちろん、全ての施策を打ったとしても、人間はルールを逸脱して行動することがあるので「完璧」にはなりません。
しかし、対応を取った厨房と、そうでない厨房では発生率に謙虚な差がでることは間違いないため、努力を惜しまずに対策を講じましょう。
大和市立大和小学校 様
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2016年冬のノロウイルス大流行はオゾンで防げたか?
2016年冬はノロウイルスの「当たり年」となりました。
これまで、大規模なノロウイルスの感染事故は1-2件という程度でしたが、当コラムが執筆されている2016年12月下旬時点で、既に例年の数倍~10倍以上の大規模な事件が発生しています。
また、例年は12月から急上昇する感染者数が、11月から急増していることも特徴として上げられます。
事件が起こってしまったこと自体は仕方ありません。
ここでは、2016年のノロウイルス大規模感染事例を見ながら、「この事件はオゾンを使うことで防げたのか、防げなかったのか」についてご紹介していきたと思います。
オゾンはノロウイルス対策にとって極めて有効ですが、全ての状況で効果がある、100%完璧なものでもありません。
当コラムでは、単に「オゾンはノロウイルスに対して有効」というだけでなく、「こんな状況では有効だが、こんな状況では効果が限定的」と、正しい情報をお伝えしたいと考えております。
単に一般的な話として流し読みするのではなく、ぜひ「皆様ご自身のご家庭や、勤務されている会社・施設に置き換えて」考えてください。
もし、オゾンを適切に使えば防げる可能性が高いのに、対応できていない部分があれば、それはそのまま、感染という健康上のリスク、また施設の運営に影響が出るという経済的なリスクとなるからです。
では、見ていきましょう。
幼稚園・保育園 (学校や施設の食堂) の場合
2016年は、他の都道府県と比べて、宮城県でのノロウイルス感染事例が多いことが指摘されています。
朝日新聞によると、例年の2.5倍から10倍のペースで患者数が推移していることが指摘されています。
また、2016年12月5日の仙台市の発表によると、大量感染の事例127件中、106件 (83%) が、保育園や幼稚園などの6歳児以下の保育施設で発生していることも指摘されています。
よって、「保育園や幼稚園でノロウイルスを防ぐことができるたか」確認してみたいと思います。
さて、当サイトのスタッフが、事件に関する報道を確認しましたが、具体的に何が原因でノロウイルスが持ち込まれ、保育園や幼稚園で広がったかについて特定できている件はありませんでした。
よって、ここでは想定される原因と対策について上げてみたいと思います。
なお、2016年12月には、陸上自衛隊富士駐屯地で、350人がノロウイルスの症状を発症させた事件がありました。
保育園や幼稚園に限らず、学校や社員食堂などの給食施設に関しても、似た状況となりますので、この項目をご覧ください。
1. 調理室からの感染
園児が食べたり飲んだりする食事や飲み物に、ノロウイルスが含まれていたのではないかという仮説です。
これをさらに分類すると、2パターンが考えられます。
(1) 調理する人がノロウイルスに感染していた(もしくは調理により感染した)場合
園児が食べる食事や飲み物を調理、準備する人がノロウイルスに感染している場合です。
調理するスタッフが、自宅やレストランで、ノロウイルスが含まれている食事を気づかずに食べ、その後、体内でノロウイルスが繁殖している状態で調理を行った場合です。もちろん、調理時には、マスクをして、手を洗ってから行いますが、何らかの形で食べ物にノロウイルスが付着してしまう可能性があります。
これをオゾンで防げたか、というと「部分的には防げた可能性が高い」という答えになります。調理室では、アルコールの消毒スプレーで手をきれいにしてから、調理を始める場合があります。しかし、ノロウイルスはアルコールスプレーでは不活性化することができません。
また、調理室の空気にノロウイルスが飛び交っている場合は、調理者がノロウイルスに空気感染する可能性もあります。
手からの感染は、オゾン水を生成し、オゾン水を使ってさっと手をふく、またはウイルスを洗い流す行為をすれば、手に付着したノロウイルスを不活性化できます。
また、空気感染については、人がいる環境でもつけっぱなしにしておけるオゾン発生器を置くことで、空気中のウイルスを不活性化し続けることができます。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
調理室 | 手からの感染 | ○ | オゾン水手洗い |
調理室 | 空気感染 | △ | 調理室でのオゾン発生器稼働(有人環境用のもの) |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
(2) 調理する食べ物にノロウイルスが含まれていた場合
幼稚園や保育園において、ノロウイルスが大量に発生する時期に、ノロウイルスが含まれている可能性が高い食べ物、例えば二枚貝や海産物などを加熱せずに出すことは、まずないといってよいでしょう。(ノロウイルスは、85度以上の熱で1分以上調理すれば不活性化できるとされています)
そもそも加熱していない魚介類を幼稚園や保育園で出すことは考えにくいですし、それをあえてノロウイルス大量発生時期に行う可能性はさらに低いといえます。
ただ、「万が一、そうしたケースがあった」と仮定して考えてみましょう。
ここでは、「A. ノロウイルスを含んだ魚介類」と「B. ノロウイルスを含んだ魚介類が、別な食品に触れ、ノロウイルスが付着した場合」の2つに分けることができます。
まず、今回は「A. ノロウイルスを含んだ魚介類」自体から、オゾンを使ってノロウイルスを不活性化することができるか、ですが、これは現実的に考えて難しいです。
考えられる方法としては、調理する前に、魚介類をオゾン水に浸して除菌する、という方法になります。
しかしながら、「魚介類を長時間オゾン水に浸けておくことは、魚介類の食感を損ねる可能性があること」、そして「魚介類の表面ではなく体内の奥にノロウイルスがある場合は、完全に不活性化できるかどうかは分からない」ため、部分的な効果しか期待できません。
つまり、ノロウイルスが含まれている食品から、オゾン水を使ってノロウイルスを完全に不活性化することはできません。
次に、「B. ノロウイルスを含んだ魚介類が、別な食品に触れ、ノロウイルスが付着した場合」です。
多くは、「魚介類を調理した後、調理器具を十分に除菌せずに、別な食品を調理した場合」に発生します。
例えば、二枚貝を調理した後、同じまな板や包丁を、さっと水洗いして、別な食品を調理した場合です。
まな板や包丁をさっと水で流すと、きれいになったようにみえますが、実際ノロウイルスは残ったままです。
よって、以後調理される食品全てにノロウイルスが付着します。
「居酒屋など宴会に参加した際、二枚貝など怪しい食べ物を食べていないのに、何故かノロウイルスに感染してしまった。
全く身に覚えがない」という場合によくあるケースです。このB.については、オゾン水を利用することでかなり高い確率で防ぐことができます。
例えば、二枚貝や魚介類を調理した後は、まな板や包丁を水で流すことはもちろん、一定時間オゾン水に浸すようにするのです。
こうすることで、ノロウイルスが調理室で調理される食品にどんどん移っていく、という事態を防ぐことができます。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
調理室全般 | ノロウイルスを含む食品からの感染 | △ | 食品を一定時間オゾン水に浸ける |
調理室全般 | ノロウイルスを含む食品と同じ調理器具で 調理された食品からの感染 | ○ | ノロウイルスが含まれている可能性が高い食品の調理後 調理器具をオゾン水に浸ける |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
(3) 梱包された食品がノロウイルスに感染していた場合
パンやチーズ、プリンといった梱包された食品がノロウイルスに感染していた場合です。
ノロウイルスは、乾燥に強く、酸素がない環境でも生き延びることができるという特性があります。
よって、食品工場で作られ梱包された食品が、様々な流通経路を経て学校に届いたときに、実は既に汚染されていたということもあります。
実際にこうした事件は発生しています。最も有名な事件は、2017年2月に「焼きのり」を原因として大規模に発生した事件となります。
和歌山県御坊市、東京都立川市、東京都小平市で学校給食を原因とするノロウイルスの集団感染が発生し、合計1,000人以上が罹患する大事故になりました。
原因は、焼きのりの裁断工程時に混入したノロウイルスであることが判明しました。
ノロウイルスは乾燥に強く、酸素がなくても生きられる性質であることが裏目に出ました。
「食べる直前に開ける」食品は、食品工場側でオゾンを使うことでノロウイルスの感染を防げた可能性はありますが、保育施設や学校側では「全ての梱包食品を開封して、オゾンを噴霧する」のは現実的でないことから、対策のしようがないのが実情です。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
食品工場 | 食品工場の作業者から、製造する食品への感染 | △ | 食品封入前にオゾンを充填する |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
2. 保育士・幼稚園教諭・児童間の感染
上記1.は食べ物からの感染でしたが、2.は人から人への感染となります。
例えば、家族でノロウイルスにかかった人がいた場合、家庭において、その人から保育士・幼稚園教諭また児童にノロウイルスが感染することは容易に考えられます。
ノロウイルスは潜伏期間が24時間から48時間ほどあるため、元気に通園している児童や保育士の中にも、ノロウイルスが潜伏している人がいるのです.(潜伏期間が過ぎた後に発症し、体調を崩します)
人から人に感染する危険については以下があります。
(1) 便や吐しゃ物の処理からの感染
児童の便や吐しゃ物を、保育士や幼稚園教諭が処理するタイミングが最も危険です。
ノロウイルスは体内で増殖したウイルスを、下痢や嘔吐という形で体の外に出します。
すなわち、便や吐しゃ物には、高濃度のノロウイルスが含まれています。
決して冗談ではなく、理想的には、防毒マスクをして、手袋をはめて処理を行うのが確実です。
ただ、保育園や幼稚園で防毒マスクを着用する、というのは、現実的には導入しにくい方法ではないかと思います。
そうなると、防毒マスクよりは一段効力が落ちますが、医療用のマスク(サージカルマスク、不織布マスクなど)を利用するのがよいでしょう。
もちろん、マスクも手袋も使い捨てです。
再利用しないでください。
この便や吐しゃ物の処理中に、有人環境でも利用できるオゾン発生器を稼働させるのは、もちろん可能です。
しかしながら、便や吐しゃ物に含まれるノロウイルスの量が非常に多く、オゾン発生器でいくら便や吐しゃ物の表面を除菌しても、便の中や吐しゃ物の中のノロウイルスに対しては、オゾンの効果も限定的です。
ごくわずかの効果しか期待できないと考えたほうがよいでしょう。
「やらないよりはやったほうがよいが、マスクや手袋のほうがはるかに重要」です。
ただ、便や吐しゃ物を処理した後はオゾン水が有効です。
万が一、手や腕、顔などに付着していると大変なので、処理した際に露出していた部分をオゾン水で洗う、または布にオゾン水をしみ込ませて拭くことで、高い効果を期待できます。
また、便や吐しゃ物を処理した後、単に床やじゅうたんを水洗い、水拭き、アルコールスプレーするだけでは危険です。
ノロウイルスが残存している可能性が高いので、オゾン水を布に浸して床を拭く、またじゅうたんなどをオゾン水で洗うことで、床やじゅうたんからの二次感染を予防することができます。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
保育園・幼稚園 | 便や吐しゃ物そのものからの感染 | × | 便や吐しゃ物の処理時にオゾン発生器を稼働させる |
保育園・幼稚園 | 便や吐しゃ物を処理した後の二次感染予防 | ○ | 便や吐しゃ物の処理が終わった後、オゾン水で手先などを洗う また、床やじゅうたんをオゾン水で洗う |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
(2) 唾液や空気からの感染
国立感染症研究所では、ノロウイルスの唾液・空気感染について、次のように記載しています。
ヒトからヒトへの感染として、ノロウイルスが飛沫感染、あるいは比較的狭い空間などでの空気感染によって感染拡大したとの報告もある。
出典: 国立感染症研究所
唾液や空気からの感染は、他の感染ルートと比べて症例は少ないですが、かといって無視することもできない、というのが実際のところです。
この感染で考えられるケースは、保育士・幼稚園教諭・児童が登園し、体調の変化も何もなく園内で過ごすが、実はノロウイルスをまき散らしているというものです。
つまり、パッと見、誰が感染して、誰が感染していないのか、全くわからないケースになります。
ここでの対策としては、園内の空気自体を除菌する、というものです。
具体的には、人がいる環境で常時稼働させておけるオゾン発生器を設置するのがよいでしょう。
これで常時園内の空気が除菌されるため、空気感染のリスクが減ります。
しかしながら、完全ではありません。
大人と比べて園児同士は遊んだり、じゃれあったりして、密に触れ合う場面が多いためです。
「密な接触時の感染は防げないが、それ以外については効果がある」とご理解ください。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
保育園・幼稚園 | 唾液や空気による人から人への感染 | △ | 人がいる環境で利用できるオゾン発生器を稼働させる |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
飲食店の場合
飲食店でのノロウイルス発生は、全国的に非常に多く発生しています。
飲食店でノロウイルスが発生した場合、4重のダメージが発生します。
つまり、
・お客様に迷惑がかかり
・従業員に迷惑がかかり
・報道により店のイメージが下がり
・保健所から営業停止処分を受ける
ということです。
例えば、2016年12月17日に、愛媛県の回転寿司店で20人がノロウイルスに感染したことが確認されています。
この店舗の場合
・20人の男性客が体調不良を訴え、
・従業員9人中5人から感染が確認され、
・大規模に新聞やネットのニュースで店名入りで報道され、
・保健所から3日間の営業停止処分を受ける
という実害が生じています。
保育園や幼稚園と比べると、飲食店は公共性が低い(他の外食選択肢がたくさんある)ため、保健所の営業停止処分が容易に下ってしまいます。
つまり、健康上のリスクと、経済的なリスクが両方起こってしまったことになります。
まず、保育園・幼稚園の調理者と比べ、外食の飲食店、特に寿司屋、和風居酒屋などでは、生の魚介類を調理することが多いため、調理者がノロウイルスに感染するリスクは非常に高いです。
さきほどの愛媛県の回転寿司店の場合でも、調理者9人中5人、つまり過半数が感染していたことになります。
「ノロウイルスの発生が多い期間は、生の魚介類を一切提供しない」のが、ノロウイルスを防ぐ確実な方法です。
洋食店やカフェであれば、生の魚介類メニューが少ないため可能でしょう。
しかし、寿司屋や和風居酒屋では、そんなことをすると、店の営業が続けられなくなってしまうため、大変悩ましい問題です。
では、飲食店でオゾンを使っていれば、ノロウイルス感染事故は防げたのか、見ていきましょう。
1. 食品自体にノロウイルスが含まれている場合
例えば、二枚貝をオゾン水に一定時間浸すことで、二枚貝の表面に付着しているノロウイルスを除菌することは可能かと思われます。
しかしながら、二枚貝の体内に含まれるウイルスまでは除菌できないため、オゾン水の効果は限定的です。
オゾン水に浸すことは、貝の食感や味に影響を与える可能性があるため、この方法は現実的ではありませんし、おすすめしません。
つまり、オゾンで行える対策はありません。
2. 調理器具からの二次感染
先ほどの寿司店の場合でも、「二枚貝や疑わしい魚介類は一切食べていないのに、ノロウイルスに感染した」方も多いのではないかと推察します。
これは、「二枚貝を調理した後、調理器具の除菌を行わずに、同じまな板と包丁で、別な魚や別な食品を調理した」ために起こるものです。
オゾン水で調理器具を洗うことで、ノロウイルスの除菌が可能であるため、この場合には大きな効果があります。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
保育園・幼稚園 | 便や吐しゃ物そのものからの感染 | × | 便や吐しゃ物の処理時にオゾン発生器を稼働させる |
保育園・幼稚園 | 便や吐しゃ物を処理した後の二次感染予防 | ○ | 便や吐しゃ物の処理が終わった後、オゾン水で手先などを洗う また、床やじゅうたんをオゾン水で洗う |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
3.調理者から食べ物への感染
調理によりノロウイルスに感染した調理人、また調理とは別に家庭などでノロウイルスに感染した調理人は危険です。
人から食べ物にノロウイルスを感染させることになるためです。空気感染、唾液感染、手など人体からの感染の3通りが考えられます。
まず空気感染ですが、これは人がいる環境で利用できるオゾン発生器を使うことで、高い効果を期待することができます。
空気中を飛び交うノロウイルスを、常時オゾンを発生させて除菌するためです。
次に、唾液感染はオゾンで防ぐことは難しいです。唾液は一瞬で口から飛んで食べ物に付着します。唾液が飛んだ瞬間、瞬時にオゾンがノロウイルスを不活性化できるかは分かりません。
食べ物にノロウイルスが付着した後、ウイルスが表面から食べ物自体の中に移動した場合、まず不活性化は難しいでしょう。
むしろ、医療用マスクを着けて、こまめに付け替える(古いマスクを捨てて、新しいマスクに交換する)ほうがよほど効果的です。最後に、手など人体からの食べ物への感染です。
これはオゾン水で手を洗うことで、ウイルスを不活性化し、食べ物への感染を防ぐことができます。手をオゾン水で濡らしてから、普通に石鹸などで手洗いし、最後オゾン水で洗い流すだけです。
気を付けたいのは、手を洗った後です。
タオルなどを共有している場合、それ自体にノロウイルスが付着している可能性があるため、ペーパータオルなど使い捨てのタオルで手を拭くほうがよいでしょう。
4. 店内の飲食スペースでの感染
お客さんが飲食する場面での感染です。
ここで考えられるのは、ノロウイルスに感染したお客さんが来店し、ノロウイルスをばらまくことで、他のお客さんに空気感染する可能性です。
対策としては、人がいる環境で利用できるオゾン発生器を店内に複数設置することになります。
例えば、奥のほうに一台、入り口付近に一台といった具合にです。
もちろん、際限なく何台も置くことは予算的にも難しいと思われますので、その場合は「店内で、特にお客さんの密度が高い場所の付近」を狙って設置するのがよいでしょう。
しかし、お店のドアが頻繁に開けたり閉めたりされるため、閉じた環境と比べるとオゾンが分解されやすい、すなわちオゾンの「効き」が悪い可能性があります。
オゾン自体には間違いなく効果がありますが、利用環境により効果が限定的になる可能性があることもご理解ください。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
飲食店調理場 | 食品自体に含まれている | - | - |
飲食店調理場 | 調理器具からの感染 | ○ | 調理器具を使うたびにオゾン水で除菌 |
飲食店調理場 | 空気感染 | ○ | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
飲食店調理場 | 唾液感染 | × | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
飲食店調理場 | 人体からの感染 | ○ | 調理前、調理中にオゾン水で手洗いをする |
店内飲食スペース | 空気感染 | △ | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
ホテルの場合
2016年11月に、札幌市のホテルで、ノロウイルスを原因とする115人の大量食中毒事件が発生しました。
ホテル側の調査により、原因は、11月19日夜から20日にかけて提供された料理であることが特定されています。
これにより、保健所から11月29日から12月5日までの7日間の営業停止処分を受けている他、自主的に営業停止期間を4日間延長して、合計11日間をその対策に充てています。
また、次のような再発防止策を上げています。
・全厨房に加えて全館の消毒・点検
・厨房内の食材の破棄
・食品の相互汚染対策
・調理・厨房におけるルールの見直し
・従業員の健康確認と衛生管理教育の再徹底
一目見て、無駄のない、よく考えられた対策を列挙していることが分かります。
別の言い方をすると、ノロウイルスを発生させたくないホテルは、事件を起こす前にこれらの対策について考えればよい、ということになります。(食材廃棄以外)
ここでは、特にオゾンと関係する「厨房・レストラン(消毒・点検・食品相互汚染対策・ルール見直し)」と「厨房以外のホテル館内」についてみていきたいと思います。
1. 厨房・レストラン(消毒・点検・食品相互汚染対策・ルール見直し)
厨房の点検については、上記の「保育園・幼稚園(学校や施設の食堂)」でお伝えした通りです。
これらと同じ対策を取れば問題ないと言えます。さらに、
・厨房内を強力に消毒するためには、無人環境用のオゾン発生器で大量のオゾンを発生させて、除菌を行うことが効果的
と言えます。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
ホテル厨房 | 食品自体に含まれている | - | - |
ホテル厨房 | 調理器具からの感染 | ○ | 調理器具を使うたびにオゾン水で除菌 |
ホテル厨房 | 空気感染 | ○ | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
ホテル厨房 | 空気感染 | ○ | 強力にオゾン除菌を行いたい場合は、 厨房が無人の状態で無人環境用のオゾン発生器を稼働 |
ホテル厨房 | 唾液感染 | × | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
ホテル厨房 | 人体からの感染 | ○ | 調理前、調理中にオゾン水で手洗いをする |
ホテルレストラン | 空気感染 | △ | 有人環境で利用できるオゾン発生器を稼働 |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
2. 厨房以外のホテル館内
冒頭でもご説明した、2006年の東京・池袋ホテルでのノロウイルス大量感染事件を思い出してみましょう。
原因は厨房ではなく、ノロウイルスに感染したホテル来館者が、館内のじゅうたんに嘔吐したことでした。
ここまでは、ホテル側に落ち度はありません。
しかし、ノロウイルスを含む吐しゃ物がしみ込んだにじゅうたんは、普通に洗浄されただけで、消毒されずに使用され続けたことにより、じゅうたんからノロウイルスが舞い上がり、空気感染が発生しました。
ノロウイルスは乾燥に強く、そして酸素がない場所でも生き延びることができます。
洗剤を使った通常の洗浄ではノロウイルスは不活性化されませんし、洗って乾燥させた後もノロウイルスは生き延びてしまうのです。
ここにホテル側の落ち度がありました。
つまり、「厨房の努力で、ノロウイルス大量感染事故を発生させない」ことも重要ですが、「いったんまき散らされたノロウイルスを、二次感染を起こさずに処理する」ことも同じくらい重要になります。
(1) 吐しゃ物・便の処理
上記の通りで、ホテル内で来館者が嘔吐した場合、またトイレの便の汚れがある場合を考えてみましょう。
吐しゃ物や便を処理し、臭いを消す、汚れを取る、だけでは、ノロウイルスは防げません。
ここでは「同時に不活性化ができるのか」という観点が重要です。
来館者をノロウイルスから守ることももちろんですが、ホテルスタッフをノロウイルスから守ることも考える必要があります。
オゾン水を利用することで、吐しゃ物が付着したじゅうたんや床、トイレなどを掃除する際に、ノロウイルスを不活性化することが可能です。
吐しゃ物・便の処理を行う際には、はじめからオゾン水を使って処理を始めることが重要です。
最後の仕上げでオゾン水を使う、という場合だと、作業中に吐しゃ物や便からノロウイルスが空気感染する可能性があるためです。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
ホテルで吐しゃ物・便からの二次感染 | 空気感染 | ○ | 吐しゃ物や便を処理する際にオゾン水を使う |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
(2) 館内の空気感染防止
ノロウイルスは空気感染の危険があります。
そして、有人環境で利用できるオゾン発生器を常時稼働させることで、ノロウイルスの不活性化に効果があります。
とはいえ、広いホテルに満遍なくオゾン発生器を設置すると、お金がいくらあっても足りません。
よって、特に効果が期待できる場所に設置することが望ましいと言えます。
・フロント
・レストラン
・トイレ(各部屋のトイレではなく共用スペースのトイレ)
・宴会場
・大浴場の更衣室
・エレベーター
ホテルは人の出入り、入り口ドアの開け閉めが頻繁であるため、オゾンが十分な効果を発揮する前に分解されやすい環境だと言えます。
よって完璧な効果を期待することは、残念ながらできません。
しかしながら、特に人が多い場所に設置することで一定の効果が期待できると考えられます。
場所 | 感染経路 | オゾンで防げたか | 方法 |
---|---|---|---|
ホテル館内 | 空気感染 | △ | 有人環境でも利用できるオゾン発生器を稼働させる |
(〇=高い効果が期待できる、△=部分的な効果が期待できる、×=防げない、-=オゾンの利用を推奨しない場面)
2016年冬のノロウイルス大流行はオゾンで防げたか?(まとめ)
オゾンはノロウイルスを除菌する効果があり、既に多くの保育園・幼稚園、飲食店、ホテルで利用されています。
ただ、オゾンが100%効果を発揮する環境で利用できるとは限りません。
ぜひ、皆様が特に効果的だと思われる方法・環境で、オゾン発生器を利用して、児童、お客様、来館者、従業員をノロウイルスから守っていただければ幸いです。
合わせて、ノロウイルスが発生しかねない施設において、「ノロウイルスはどのように感染するか」「どのような対策を取れば感染が防げるか」「厨房などで働く人が注意するポイントは何か」「どのような行為を行ってはいけないか」などを従業員に教育することも極めて重要です。
オゾン発生器 オゾンクルーラー
オゾンクルーラーは、ウイルス対策に関するエビデンスを元に開発されたオゾン発生機能付き空気清浄機です。
オゾンクルーラーは、低濃度モードと高濃度モード、どちらかのモードで運転できます。20~30㎡、高さ2.5m程度の空間であれば、低濃度モードであればオゾン濃度は0.5ppm前後、高濃度モードであれば1ppm前後になります。
エビデンスに基づくと、0.5ppmというのは人がいても全く問題のない濃度かつウイルス対策可能な濃度、1ppmはウイルスの対策がしっかりできる濃度です。
低濃度モードは、オゾンとマイナスイオンを交互に放出し、高濃度モードは一気にオゾンを放出して室内を高濃度にします。
高濃度モード使用時は人や動物が室内にいないようにしてください。
オゾン発生器 オースリークリア3
初代オースリークリアの登場が2008年、後継のオースリークリア2が2015年、フルモデルチェンジしたオースリークリア3は2019年の9月にリリースされました。
販売開始以来大人気を誇る機種であるためユーザー層は厚く、ホテルや旅館等の宿泊関連事業者様、自動車、飲食、不動産、介護、保育、学校等、様々な事業者様の他、ご家庭でのご利用も多いです。
50㎡、2.5m程度の高さの部屋であれば、1時間で1ppm前後のオゾン濃度にすることができるため、脱臭にもウイルス対策にも十分な効果を得られます。